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National CineMedia, Inc.NCMI
事業内容
National CineMedia, Inc.は米国の映画館内広告ネットワークを運営する企業で、映画館で上映する広告番組「The Noovie Show」などの広告コンテンツを制作・配信することを主力事業としています。劇場のスクリーンやロビー向けの映像配信やデジタル配信基盤の運用を通じて、映画館来場者に向けた映像広告を届けています。
同社の主要顧客は全国規模から地域・ローカルまでの広告主で、消費財や自動車、映画配給会社などが中心です。収益は広告枠の販売がほとんどを占め、広告出稿の季節性(新作公開期や夏休み・年末の需要増)や広告主のマーケティング予算の動向に強く連動します。
事業構成としては広告が唯一の報告セグメントで、製品ラインは劇場内のプレロール広告やロビーコンテンツ、代替コンテンツ配信、デジタルサービスやデータ関連サービス(ウェブ・アプリや参加型コンテンツを含む)などに分かれます。全国規模のスクリーン網と衛星+地上回線を組み合わせた配信ネットワークや運用センターを使い、短期間での配信手配や再生確認、広告効果のレポートを広告主に提供しています。
経営方針
同社は大規模なシネマネットワークの強みを活かして広告収益を成長させることを目指しています。米国内で1,408館、18,028スクリーンのネットワークを持ち、2024年には同社契約下の劇場で約3億9,000万人が映画鑑賞しており、このリーチを背景に年間売上の約30.1%を占める「アプフロント(年間まとまった広告枠の事前販売)」で大口広告主の確保を図っています。また、排他的な劇場契約やネットワーク提携からの前受け収入が2024年には総収益の約19.0%を占めており、同社はこれらの安定収入を基盤に収益性の回復と拡大を目指しています。株主還元面では取締役会が上限1億ドルの自社株買いを承認しており、2024年は約252万5千株を取得しています。
同社はデータと統合商品への投資を差別化の柱としています。クラウドベースのデータ管理プラットフォーム(DMP)を整備し、ファーストパーティデータの拡大や外部データの統合により広告のターゲティング精度と効果測定を高める施策を進めています。画面内広告に加えてロビー広告やデジタル屋外媒体を組み合わせた「ワンストップ」提案で広告接触回数を増やし、NCMxやNCM Boostといったデータ駆動の商品で効果の可視化と成果連動を打ち出している点が差別化要因です。映画館来場者は若年層の比率が高く(12–34歳が約62%)、世帯所得の高い層の割合(世帯年収10万ドル超が約47.5%)も大きいため、同社は価値の高いオーディエンスを提供できるとしています。
事業拡大では、同社はデジタルと非上映時間帯(ポストショータイム)を含む新たな収益源の開拓を目指しています。2025年にはDMPの機能強化を通じてファーストパーティデータをさらに広げ、第二・第三者データや追加セグメントを取り込む計画を公表しており、これにより広告商品の精緻化と新たな販売チャネルの創出を図ります。加えて、ネットワーク拡大は既存のESA(劇場サービス契約)当事者やローカル提携先との長期契約を活用して行い、年間のアプフロントや個別広告案件でのプレミアム在庫確保を継続的に進めています。外部投資としては、2024年に現金1.0百万ドルで広告関連企業の出資を行い、別途3年で提供するオンスクリーン広告2.0百万ドルを株式と交換する取引を実施するなど、事業提携による拡張も進めています。
同社は技術革新を経営戦略の中核に据えており、既存の配信基盤と測定機能を一層強化する方針です。衛星と陸上回線を組み合わせた配信ネットワークや代替コンテンツ管理エンジンを用い、コンテンツ配信の効率化とスケーラビリティを確保しているほか、視聴確認や広告結果の「アトリビューション(成果の帰属)」を強化して広告主に説明可能な数字を提供しています。セキュリティ面では国際標準に照らした四半期ごとの見直しと外部監査、事案発生時のインシデント対応体制を整備しており、同社はこうした技術・ガバナンス投資により「測定可能でターゲティングされた」シネマ広告を目指しています。