NeuBase Therapeutics, Inc.NBSE

時価総額
$141万
PER
前臨床段階のバイオ医薬品開発の新興企業。PATrOLプラットフォーム由来の遺伝子標的治療候補を展開。2021年4月のVera買収と2022年1月のCMUライセンスでの株式発行、2022年10月に従業員を約60%削減し15名体制。米国中心に展開。

事業内容

NeuBase Therapeutics, Inc.は、遺伝子の異常を直接狙う新しい治療法の研究・開発を行うバイオ医薬品企業です。同社は独自のPATrOLプラットフォームを使って、遺伝子発現を抑える抗遺伝子治療候補の創出に注力しており、ハンチントン病やミオトニックジストロフィーなど中枢神経系や筋疾患の治療を目指しています。現時点で承認済みの市販製品はなく、開発段階の候補が主力です。

主要な顧客はまだ存在せず、同社の収益は研究助成金や共同研究・ライセンス契約からの収入に依存しています。同社は製品販売による安定的な収益化に至っていないため、開発資金は主に株式発行や提携、外部資金調達でまかなっています。

事業は研究開発を中心とする単一セグメントで、PATrOL技術の改良と複数の前臨床候補の育成が主な活動です。同社は研究規模の製造を一部内製しつつ、大規模製造や臨床試験の実施は外部委託で対応する方針で、大学ライセンスや外部から取得した知的財産を基盤にパイプラインを再編しています。

経営方針

同社は、事業の再編を通じて遺伝子編集領域での優位性を確立し、資金効率の高い成長を目指しています。2022年10月に発表した戦略的リストラクチャリングでは、研究開発体制の重点を遺伝子編集プラットフォームに移すとともに、約60%の人員削減や運営費の削減を実施し、リストラ関連費用をおおむね50万ドルと見積もることで、現行の事業計画に基づき資金の持ちを2024年第二四半期まで延長する見込みを示しています。2022年9月30日時点の現金は約2,320万ドルで、同会計年度の営業損失は約3,330万ドル、営業活動によるキャッシュ消費は約2,900万ドルであったため、同社は追加の資金調達(株式発行、借入、あるいはライセンス取引)を必要とする状況にあります。

同社は重点投資分野として、独自のPATrOL™ベースの遺伝子編集能力に注力しています。差別化の核は、全身投与で広範囲の組織に届きうる点や、血液脳関門を越えて中枢神経に到達する可能性、標的変異に対する選択性の高さ、単回ないし複数回投与でも大きな免疫反応を引き起こしにくい点などであり、これらを武器に希少遺伝子疾患や腫瘍適応を狙っています。技術強化の一環として、ペプチド核酸(PNA)足場を含む資産をVera Therapeuticsから取得しており、取得対価の総額は約285.9万ドル(現金約79.6万ドル+自社株式308,635株の時価)でした。また、カーネギーメロン大学とのライセンス等を通じて知財基盤を拡充しており、将来の製品化時には低い一桁台のロイヤルティ支払いを想定しています。

同社は新市場開拓や事業拡大に際しては、資金制約を踏まえた協業・ライセンス戦略を志向しています。DM1、HD、KRASなど既存プログラムについては前臨床活動やDM1のIND申請計画を一時的に保留し、共同開発やパートナーシップを通じた進展を模索する方針を示しています。製造や臨床運営は外部委託で対応する計画で、内部はコア技術と重要プロジェクトに人的資源を絞ることで運営効率を高める狙いです。ただし、保険償還や各国の価格交渉が商業化の成否に大きく影響するため、パートナー選定や市場導入の戦略が成長の鍵になります。

同社は技術革新を継続的な競争力の源泉と位置づけ、プラットフォーム改良と知財拡充に投資を続ける方針です。PATrOL™技術の差別化優位を臨床応用に結びつけるため、外部研究者との連携や標的選定の最適化、製剤・投与法の改良を進める一方で、限られた資金を効率的に配分するための経営判断を重視しています。成功すれば希少疾患領域での独自ポジション獲得が見込まれますが、資金調達や臨床・規制の不確実性が依然として事業リスクである点には留意が必要です。