Nebius Group N.V.NBIS

時価総額
PER
AIインフラ・クラウド事業の有力企業。高性能GPUクラスタ、フルスタックAIクラウドプラットフォームを展開。2024年5月・7月にロシア事業を売却、2024年12月に約7億ドルを私募で調達。欧州・米国・イスラエルを中心にグローバル展開。

事業内容

Nebius Group N.V.はアムステルダムに本社を置くテクノロジー企業で、主にAI向けのインフラとクラウドサービスを展開しています。同社は高性能GPUクラスタや独自のクラウド基盤、モデルの学習や推論を支援するソフトウェアを一体で提供し、開発から運用までのフルスタック環境を整えています。

主要顧客はAIネイティブのスタートアップが中心ですが、先端AI研究所や大手テクノロジー企業、企業向け導入の拡大も狙っています。同社の収益は主にコンピュート利用料やプラットフォーム利用料、付加価値サービスから成り立ち、使用量に応じた課金やサブスクリプションを組み合わせた構造です。事業は設備投資が大きく資本集約的であり、成長には追加の資金調達が重要になります。

事業セグメントはコアのAIインフラと複数の成長事業に分かれています。同社のインフラ事業はデータセンター運営、専用ハードウェア設計、高速ネットワークとソフトウェア層を組み合わせたGPUクラスターを中核とし、データ準備からモデルのデプロイまでを一貫して支えるプラットフォーム機能を備えています。加えて、Avride(自動運転関連)、Toloka(AI向けデータ制作)、TripleTen(職業訓練型の教育事業)といった別事業を運営し、ClickHouseへの出資を通じてデータ基盤領域にも関与しています。

経営方針

同社はフルスタックのAIインフラ事業を成長の中核に据え、グローバルで高性能なコンピュート容量を拡大することで市場シェアを高めることを目指しています。2024年の継続事業の売上は約1.175億ドルでしたが、事業再編やデータセンターの拡張など先行投資により2024年は約3.935億ドルの純損失を計上しました。資金面では2024年12月に約7億ドルを調達する私募を完了しており、この資金を用いてGPUクラスターやデータセンターの建設、ソフトウェア基盤の整備といった拡大投資を進める計画です。ただし事業は資本集約的であり、追加の資金調達や電力・部材の確保が成長の前提である点も明確に伝えています。

同社はデータセンター、専用設計のハードウェア、そして運用を自動化するソフトウェアの三本柱に重点投資を行い、ここで差別化を図っています。具体的には米国に加えフィンランド、フランス、アイスランドなどで拠点を拡充し、高密度のラック構成に耐える電力供給や冷却設計を整備するとともに、社内でのハードウェア設計・生産能力を強化しています。さらに主要ハードウェアベンダーやサーバー設計メーカーとの連携や、いわゆるNVIDIAの基準を満たす参照プラットフォーム認定などを通じて、顧客に対して性能とコスト面で優位性のある提供を目指しています。

新市場開拓と事業拡大では、これまでのAIネイティブスタートアップ中心の顧客基盤に加え、先端的な研究機関や大手テクノロジー企業、企業向けの専用クラウド需要を取り込む方針です。並行して自動運転技術のAvride、データ調達のToloka、職業再教育のTripleTenといった補助事業も育成しており、Avrideについては従業員向け持株制度(最大7,926,674株相当)を導入するとともに外部資本の呼び込みを検討しています。これによりコアのAIインフラと周辺事業を組み合わせ、市場機会を広げる戦略をとっています。

技術革新への取り組みとしては、GPUクラスタや独自のクラウドプラットフォーム、モデル学習・推論のための運用ツール群を継続的に開発しています。内部統制と情報システムの整備にも注力しており、2024年に発見した会計関連の統制上の弱点については外部コンサルを交えた全社的な是正プロジェクトを開始し、2024年には収益の突合や資産実地棚卸などの補完的な手続きを実施しました。特に収益認識や固定資産の照合に関わるシステム改善と運用統制の有効化を進め、2025年第4四半期までの是正完了を目標にしています。また、研究開発拠点を欧州、北米、イスラエルに展開し、人材採用・育成にも投資している点が技術競争力の源泉となっています。