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Metallus Inc.MTUS
事業内容
Metallus Inc.は特殊バー品質(SBQ)鋼のバーを中心に、シームレス機械用チューブやビレットなどの高性能合金鋼を製造している企業です。同社は顧客の仕様に合わせた化学組成や仕上げでカスタム生産を行い、米国内の複数の製造拠点で一貫生産をしています。年溶解能力は約120万トン、出荷能力は約90万トンです。
主要顧客は産業、自動車、航空・防衛、エネルギー分野のOEMやメーカーで、約330社に製品を販売しています。同社は多くを直接販売しつつ、約18%は流通業者やサービスセンター経由での販売となっており、上位顧客への依存度は高めで2024年は一社が売上の11.2%を占めました。営業・技術チームが連携して顧客ごとに仕様や価格を個別に詰める収益構造です。
事業は報告上は単一セグメントで運営され、SBQバー、シームレスチューブ、ビレットに加え、自動車向けなどの精密加工部品も手掛けています。同社は500種類以上の鋼種を扱い、歯車や軸、クランクシャフト、油田用機器、軸受部品など高負荷で高品質を求められる用途向けに製品を供給しています。設計・生産・顧客サービスを統合して設計段階から納品まで一貫したソリューションを提供しています。
経営方針
同社は持続的な収益拡大とバランスシートの堅持を成長戦略の中核に据えています。2024年は売上高が$1,084.0 millionと前年から約20.4%減少しましたが、同社は「高付加価値製品へのシフト」と「資本効率の向上」によって中長期的な収益性回復を目指しています。具体的には設備投資を継続しており、2024年の有形固定資産の有機投資は$64.3 millionに上り、安全対策や設備の自動化、品質と稼働率向上を重視しています。また自社株買いによる株主還元も並行して行い、2024年は約200万株(約$37.6 million)を取得、さらに転換社債の買戻し等で希薄化を抑制し、2025年2月時点で流動性は$458.6 million(現金$240.7 million)と余裕資金を保持しています。
同社は重点投資分野として特殊鋼(SBQ)やシームレス管、加工部品などの高付加価値領域に集中し、冶金(材料設計)と工程管理を差別化の源泉としています。製品ポートフォリオは500種類以上のグレードをカスタム生産できる点が強みで、営業・技術チームの約70%が工学系出身であることを活かして設計段階から顧客と協業する体制を整えています。製造拠点の一体的運用により生産コスト管理と品質統制を一元化し、製品の「クリーンさ」と「性能」を競争優位に変えているのが同社の差別化戦略です。
新市場開拓と事業拡大では、国防分野を含む高需要セグメントの取り込みを明確な成長機会と位置づけています。既に米国政府との$99.75 millionの支援協定に基づき、2024年に$53.5 millionを受領しており、これにより連続ブルーム再加熱炉やローラーハース炉を導入して弾薬関連の生産能力を強化します。稼働目標は連続ブルーム炉を2025年後半、ローラー炉を2026年上半期とし、これが実現すれば製造能力と出荷能力の底上げに寄与すると見込んでいます。加えて流通チャネルの最適化や製造部品の垂直展開、将来的な買収を含む外部成長機会の検討を続けることで市場シェア拡大を図っています。
技術革新の取り組みは生産現場の自動化とデータ活用を両輪にしています。基幹業務システムのS/4 HANAへの移行を進め、2024年第四四半期に財務データの初期移行を完了しており、フェーズごとに運用拡大していく計画です。サイバーセキュリティ対策は国の指針に基づく手順と外部評価を組み合わせて強化しており、AI(人工知能)に関しては社内の横断チームを設置してデータ分析や品質改善への応用を段階的に進めています。これらの投資により同社は製品の歩留まり改善、納期短縮、トレーサビリティ向上を実現し、顧客の要求水準が高い分野での競争力を高めることを目指しています。