Molecular Templates, Inc.MTEM

時価総額
$537.43
PER
バイオ医薬品の新興企業。抗体薬物複合体(ETB)などの生物製剤の開発。大手製薬との共同研究、2019年11月の包括提携、2017年PIPEで$40.0M調達、2023年7月私募で約$20M調達、2024年3月改定で$9.5M予定。米国中心に展開。

事業内容

Molecular Templates, Inc.は、がん治療を中心とした独自の生物薬品プラットフォームを使い、新しい治療候補の研究開発を行っています。主力は標的細胞に特化した抗体ベースの治療候補群(ETBと呼ばれる技術)で、臨床・前臨床段階の薬剤を育成しています。

同社の主要な「顧客」は患者向けの売上先ではなく、共同研究やライセンス契約を結ぶ大手製薬企業や公的研究機関で、収益は主に共同研究収入や助成金、将来期待されるマイルストーンやライセンス料に依存しています。現時点で商業化製品による売上はなく、研究開発資金は株式発行や借入などの資金調達でも賄っています。

事業は研究開発とパートナーシップの二本柱で展開しており、自社で候補薬の臨床開発を進める一方、他社との共同開発や技術ライセンスを通じた収益化も目指しています。短期的には臨床試験の進展と提携拡大が企業価値の鍵となり、承認後の製造・販売は自社展開かパートナー任せかを含めた複数の選択肢を想定しています。

経営方針

同社は臨床段階の生物薬(バイオロジクス)を成長のコアとし、主要候補薬の開発を通じて企業価値を高めることを目指しています。財務面では2023年12月31日時点で現金約1,150万ドルを保有しており、この資金で2024年第2四半期末までの運転資金を賄う見込みとしていますが、2024年3月に修正した私募の第2回トランシェ(総額約950万ドル、純手取り約890万ドル)が実行されれば資金繰りは第4四半期まで延長される見通しです。なお、同社は累積赤字約4.53億ドルや税法上の利用制限により利用できない繰越欠損(約2.53億ドル)といった財務的ハードルも抱えており、追加の資金調達や戦略的取引を成長計画の前提に据えています。

同社は研究開発資源をMT-6402(PD-L1プログラム)、MT-8421、MT-0169の臨床開発に集中投下する方針です。2023年の戦略的再優先化では人員を約68%削減し、MT-5111の開発を中止してこれら主要プログラムとブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)との共同前臨床活動に注力する実務的な措置を取りました。差別化点としては、遺伝子改変型のSLTAを基盤とした独自の「ETB」プラットフォームと、抗原を“シード”する発想を使った免疫療法的アプローチにより、既存治療と異なる作用機序で高い効果を狙う点を掲げています。大手製薬との提携実績(BMS、武田、Vertexなど)を通じた資金調達や技術検証も差別化戦略の重要な柱です。

事業拡大に関しては臨床開発の加速に伴い、承認時には製造能力の拡充や販売・流通体制の構築を視野に入れていますが、その前提としては追加資金の確保が不可欠です。資金調達手段としては私募や公募、借入、あるいはライセンス/共同開発など幅広い「戦略的選択肢(ファイナンス、売却、合併等)」を検討中で、2024年3月にはこれらを含む包括的な検討を継続する旨を公表しました。実際に2023年7月の私募第1回トランシェでは約1.62百万株を1株当たり7.05ドルで発行し、総額約2,000万ドル(純額約1,840万ドル)を得ており、今後も同様に外部資金と提携を組み合わせて事業を拡大する計画です。

技術革新への取り組みは同社の中核であり、既存のETBプラットフォームの改良や「抗原シード」アプローチの適用拡大に継続投資しています。具体的にはMT-6402のPD-L1プログラムやMT-8421の臨床第I相試験の支援、MT-0169の血液腫瘍向け第I相開始準備といった短期的な開発マイルストーンに資源を集中するとともに、知的財産や前臨床データの蓄積で将来の商業化可能性を高める方針です。政府系の研究開発税額控除(連邦約2,390万ドル、州約290万ドル)といった支援策も活用しつつ、限られた資金の中で技術的優位性の実証を急いでいます。