Merck & Co., Inc.MRK

時価総額
$2454.8億
PER
研究開発型バイオ医薬品・ワクチン・動物用製品の世界最大手。がん免疫療法やワクチン、デジタル獣医保健ソリューションを展開。2024年7月に眼科バイオ企業を約12億ドルで買収。米国・欧州・中国や新興市場を中心に展開。

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企業概況
188文字)
業績概況
139文字)
テーマ
1項目)
ブランド
4項目)
ライバル企業
5社)
同業種の日本企業
4社)

事業内容

Merck & Co., Inc.は、研究開発を基盤にした世界的な製薬企業で、がんや感染症、循環器などの治療薬や予防用ワクチン、さらに動物用医薬品を開発・製造・販売しています。臨床開発から商業化まで一貫して手掛け、新薬やワクチンを継続的に市場に出しています。

同社の主要な顧客は医薬品卸、病院、診療所、医師、政府機関や保険・医療提供組織で、売上の大部分は処方薬とワクチンの製品販売に依存しています。特許の存続や価格交渉、ジェネリックやバイオシミラーとの競争、各国の規制や新興国市場の動向が収益に直接影響します。

同社は事業を人間用医薬品(処方薬)、ワクチン、動物用医薬品のセグメントに分け、それぞれで領域別の製品ラインやサービスを展開しています。研究開発投資やライセンス・買収によって開発候補群を強化し、世界各地の製造拠点やデジタルを活用した付加価値サービスと組み合わせて製品の商業化を進めています。

経営方針

同社は持続的な成長と安定した株主還元の両立を目指しています。具体的には研究開発や成長分野への投資を優先する一方で、配当と自社株買いによる還元を堅持しており、取締役会は2024年11月に四半期配当を1株当たり0.77ドルから0.81ドルに引き上げることを承認しました。2024年には配当7.8億ドルと自社株買い1.3億ドルを合わせて約91億ドル(注:原資料は百万単位で記載)を株主に還元しており、2025年1月にはさらに最大100億ドルの自社株買い枠を承認しています。こうした資本配分は短期的な利益だけでなく中長期の成長エンジンを支える投資を両立させる方針を示しています。

重点投資分野では腫瘍(がん)領域、免疫疾患、心血管代謝領域、眼科、抗ウイルス薬、そして動物用医薬が挙げられます。同社はKeytruda(がん免疫療法)を核に複数の併用療法を進める一方で、抗体に薬を結びつけてがん細胞だけを狙う「抗体薬物複合体(ADC)」などターゲット治療の開発に注力して差別化を図っています。パイプラインには眼科のMK‑3000や、HIV治療のMK‑8591系、経口でLDL(悪玉コレステロール)を下げる可能性のあるMK‑0616、炎症性腸疾患のMK‑7240、パンデミック対応薬としてのMK‑4482(Lagevrio)などフェーズ3の候補が複数あり、またDaiichi SankyoやGilead、Kelun‑Biotechなど複数の外部パートナーと共同開発を行うことでリスク分散と開発スピードの両立を狙っています。

新市場開拓と事業拡大はM&Aと地域戦略の両面で進められています。動物用医薬の水産向けワクチン強化を目的にElancoのアクア事業を1,303百万ドル(約13億ドル)で取得し、眼科の技術強化のためEyebiotechを約1,200百万ドル(約12億ドル)で買収するなど、戦略的な買収で製品ラインと市場参入を加速させています。一方で新興市場、特に中国では保険制度や政府の価格交渉による価格圧力が強まっており、成長機会を取るために販売体制の整備や現地パートナーとの協働を図りつつ、価格や規制リスクの管理にも注力しています。

技術革新については人工知能やデジタル技術を研究開発、製造、意思決定に幅広く導入して効率化と創薬の加速を目指しています。AI導入に伴う偏りや誤動作、法規制やプライバシーへの対応、サイバー攻撃リスクを意識しており、社内の統制強化やベンダー監査、事故事例を想定した演習などで防御を固めています。加えて生産設備の投資や臨床開発費の増加を通じて、科学的優位性の確立と市場投入のスピード向上を両立することを目標としています。