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MOOG INC.MOG-A
事業内容
MOOG INC.は高精度なモーションコントロール製品とアクチュエーション(駆動)システムの設計・製造を主力とする企業です。コンポーネントから完成システム、さらに保守・改修に至るまでエンジニアリング主導で一貫したソリューションを提供しています。
同社の主要顧客は航空機メーカーや防衛関連企業、宇宙機関、産業機械や医療機器のOEMで、航空宇宙・防衛向けが売上の約60%を占めます。産業分野が約27%、アフターマーケット(部品販売や修理・オーバーホール)が約13%で、米国政府向け契約も多く(約38%)、大口顧客への依存が収益構造に影響しています。
事業は宇宙・防衛、軍用機、商用機、産業・医療の各セグメントに分かれており、操縦用アクチュエータや高精度制御装置、推力方向制御や衛星用部品、シミュレーション・試験装置、エネルギー向け機器、医療向けデバイスなど幅広い製品ラインを持っています。同社は製品設計・製造に加えアフターサービスや修理も手がけ、研究開発投資や戦略的買収で技術領域と市場を拡大しています。
経営方針
同社は中期的に収益性の改善と持続的な売上成長を両立させることを目指しています。2025年度の見通しでは、売上高を約3,700百万ドル(2024年比で約3%増)に引き上げ、営業利益率を約13.0%に改善させる計画を示しています。これにより純利益は約267百万ドル、希薄化後1株当たり利益はレンジで$8.00〜$8.40(中央値$8.20)を想定しており、受注残(12か月バックログ)は約25億ドルで2023年から約3%の増加となっています。受注の裾野を広げつつ利益率を高めることが成長戦略の中心です。
同社は重点投資分野として宇宙・防衛、軍用機、商用機、産業部門を挙げており、特に宇宙・防衛と軍用機における需要拡大を差別化の柱としています。差別化戦略は「高精度なモーション制御技術」と顧客に密着した設計・統合力にあります。具体的施策として、価格戦略の強化と業務の簡素化(80/20アプローチ)を進め、製品・事業ポートフォリオの見直しや工場の集約、オートメーション投資で製造効率を引き上げます。研究開発費は2024年に約113百万ドル(売上の約3%)を投じており、これが技術優位を維持するための基盤です。
新市場開拓と事業拡大では、同社は防衛向け製品や欧州の地上車両向け、商用機の生産立ち上げ、アフターサービス(保守・部品)拡大に注力しています。軍用機ではFLRAAなどの大型プログラムの量産化によりOEM売上が拡大する見込みで、商用機でもワイドボディ・ナローボディ・ビジネスジェットの生産立ち上げで売上が伸びる計画です。また、M&Aは機会があれば行う方針で、2023年には舗装調査機器のDCLを約6百万ドルで買収しています。一方で産業部門はポートフォリオ調整により一時的に売上が縮小する見通し(2025年は約5%減)ですが、これも高付加価値分野への資源再配分の一環です。
技術革新への取り組みは同社の中核で、同社はコンポーネントメーカーからシステム設計/統合企業へと進化してきた技術力をさらに強化しています。研究開発投資に加え、製造現場への自動化導入や運用のデジタル化で生産性を高め、特許やノウハウで知的財産を保護します。また、防衛分野の取引や重要インフラへの供給という性格上、サイバーセキュリティ対策やコンプライアンス強化にも投資しています。環境面では2022年比でScope1/2排出量を2030年までに40%削減する目標を掲げ、持続可能性を技術革新と並行して進めています。