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MERCER INTERNATIONAL INC.MERC
事業内容
MERCER INTERNATIONAL INC.は、木材を原料にクラフトパルプの製造を中核事業とし、製材や集成材などの固形木材製品の生産、さらに工場で発生する余剰電力や一部化学品の販売も手がける林産製造会社です。同社はカナダ・ドイツ・米国に主要な製造拠点を持ち、原料調達から加工、エネルギー回収まで一貫して運営しています。
同社の主要な顧客は製紙会社や衛生紙メーカー、建設業者や木材加工業者で、卸売や直接販売を通じて国内外に製品を供給しています。収益は主にパルプと木材製品の販売が占めますが、発電による電力販売やバイオ燃料などの副収入もあり、商品価格や需要の変動によって業績が動きます。
事業は大きくパルプ部門、ソリッドウッド(製材・集成材)部門、及びエネルギー・化学品部門に分かれており、各工場でそれぞれの製品ラインを運営しています。具体的にはクラフトパルプの生産、ランバー(製材)や集成材(CLTや接着梁など)、パレットやバイオ燃料の製造・販売を行い、木材調達と物流も同社が管理してコストと供給の安定化を図っています。
経営方針
同社は持続可能な成長を目指して、資産拡大と収益の多様化を追求しています。具体的には既存設備の性能向上に向けた選択的な資本支出と、周辺分野の買収を組み合わせた「オーガニック+外部」両面の成長戦略を採っています。近年の主な買収としては、2022年にドイツのTorgauを約€270百万(約$263.2百万)で取得し、2023年には米国のStructurlam関連資産を約$82.1百万で取得、2021年にはSpokane施設を約$51.3百万で取得しています。市場評価としては、2024年6月30日時点の非関連株主保有分の時価総額が約$564.2百万、発行済株式数は2025年2月18日時点で66,870,774株となっており、同社はこの資本基盤を維持しながら安定収益の実現を目指しています(業績評価には現金性支出を除く「Operating EBITDA」を補助指標として用いています)。
同社は投資の重点をパルプ(紙原料)と固体木材(製材・CLT・グルーラム)、および工場で発生する再生可能エネルギーや化学製品の販売に置いています。差別化の核は「最新でエネルギー効率の高い製造設備」を運営することにより、グローバルな景気変動の中でも低コストで安定した生産を行える点です。実例として、FriesauやTorgauでは余剰電力を販売しており、2024年には余剰電力126,280 MWhで約$16.5百万の売上を計上しています。環境・安全・社会配慮も経営の中心に据えており、労働安全の「Road to Zero」や多様性促進などを通じて長期的な競争力の強化を図っています。
同社は新市場や事業領域の開拓にも積極的で、近年の買収は質の高い木材製品やマスティンバー(CLT・グルーラム)市場への本格参入を示しています。今後も既存製品ラインの拡充と、買収による地域的・製品的な多角化を狙う方針であり、その際はバランスシートの健全性と流動性を重視すると明言しています。地域社会との協働も重視しており、カナダでは先住民族との共同事業拡大や雇用・訓練プログラムを推進しています。また人材面では、女性の新規採用比率を2030年までに25%に引き上げる目標を掲げるなど、労働力確保と多様化による事業拡大の基盤整備にも取り組んでいます。
技術革新については、設備の近代化と省エネ化、製品開発による付加価値創出を中心に投資を継続しています。生産プロセスの効率化や新製品(CLT・グルーラムなど)への応用、さらに発電設備を含めた統合的エネルギー管理に注力しており、これが収益源の多様化につながっています。併せて情報セキュリティやリスク管理にも投資しており、サイバー対策では国際的なガイドライン(ISO、NIST等)に沿った体制整備、継続的な監視と外部ベンダーによる対応能力の強化を行っています。こうした技術・管理面の強化が、長期的な収益安定と資本効率の改善を支える柱になっています。