Metalpha Technology Holding LtdMATH

時価総額
PER
香港での証券助言・資産運用事業の新興企業。SFC Type4/9保有、2024年4月にType1取得で仮想資産サービスを展開。2023年5月にNextGen Fundへ500万ドルのアンカー投資、2024年3月時点のAUM6130万ドル。中国の供給網事業は2023年1月停止・3月売却、展開地域香港中心。

事業内容

Metalpha Technology Holding Ltdは、主に暗号資産(仮想通貨)を中心としたウェルスマネジメント事業を展開しています。同社は顧客向けに暗号資産デリバティブの発行や取引執行を行い、自社トレーディングでも収益を上げています。また、香港子会社のLSQ Capitalが証券助言や資産運用のライセンスを保有し、証券・仮想資産の取引サービスも手掛けています。

同社の主要顧客は機関投資家や高額純資産者といったプロフェッショナル投資家層で、収益は顧客向けデリバティブの発行手数料や取引執行、自己勘定トレードが中心です。顧客集中度が高く、上位数社で売上の大きな割合を占めるため、主要顧客との関係変化が業績に大きく影響するリスクを抱えています。

事業面では(1)暗号資産およびそのデリバティブの発行・トレーディング、(2)香港での証券助言・資産運用、(3)ファンド運用の三本柱を持っています。同社はNextGen Fundを通じてGrayscaleの投資商品への間接的なアクセスを提供する運用も行っており、同ファンドの運用資産は2024年3月時点で約6,130万ドルです。以前に行っていた中国本土のサプライチェーン事業は既に停止・売却しています。

経営方針

同社は成長段階にあるウェルスマネジメント事業を中核に据え、事業の拡大と収益性の回復を目指しています。直近では2022年からの事業転換後に収入が拡大し、継続事業の収入は2022年の約12万ドルから2023年に約570万ドル、2024年に約1,680万ドルへと増加しています。一方で2024会計年度の当期損失は約380万ドル、営業活動による純資金流出は約1,160万ドル、累積欠損は約4,400万ドルと報告されており、独立監査人は継続企業の前提に関して疑義を表明しています。こうした背景を踏まえ、同社はまず現有の運転資金によって少なくとも12か月間の運転は賄えるとしつつ、収益性改善とキャッシュフローの安定化を優先課題としています。

同社は暗号資産関連のデリバティブと裁定取引を主軸に、機関投資家と富裕層を主要顧客として差別化を図っています。香港子会社LSQ CapitalはSFCのType 4(有価証券助言)・Type 9(資産運用)ライセンスに加え、2024年4月にType 1(有価証券及び仮想資産のディーリング)ライセンスを取得しており、これを強みとしてアドバイザリーと取引執行をワンストップで提供できる点を訴求しています。実務面では、NextGen Digital Ventureとの提携で運用するファンドの運用資産残高は2024年3月31日時点で約6,130万ドルに到達しており、SFCライセンスと組合せた規制対応型商品で機関需要を取り込む狙いです。ただし取引先集中(2024年度は上位3顧客で取引総額の約53.2%)や主要取引先・カストディの依存(例:主要ヘッジ先としての大手取引所)といったリスクは残っており、同社はこれらを顧客開拓とリスク管理で是正することを目指しています。

新市場開拓と事業拡大に関しては、従来のサプライチェーン事業を2023年に整理し、香港を拠点とする金融サービスへ集中する戦略を取っています。同社は今後、SFCライセンスを活かして仮想資産を含む資産運用サービスの提供範囲を広げるとともに、機関投資家やファミリーオフィスへの販売チャネルを拡大することを目指しています。成長資金の確保が前提であり、既に多数のワラント(約3,290万件のワラント発行)やストックインセンティブ計画(2022年計画で330万株、2024年計画で200万株を準備)を運用しているため、将来の資金調達は希薄化リスクを伴う点も投資家は確認すべきです。また、NASDAQ上場維持のための開示・報告義務遵守にも注力しており、過去の提出遅延からの改善を進めています。

技術革新と内部統制の強化にも取り組んでおり、同社は市場のボラティリティに対応するためのリスク管理・ポートフォリオヘッジ能力を重視しています。内部統制面ではガバナンス体制の整備、リスクアセスメントの実施、権限承認や会計記録の管理、資産の保護、予算管理、情報伝達の仕組み構築、および内部監査による継続的な改善といった具体的施策を計画しています。加えて、暗号資産固有のリスク(秘密鍵喪失、取引所やカストディ事業者の運用停止等)に対応するため、取引先の分散や保護措置の導入、外部パートナーとの契約整備を通じて技術面・運用面の信頼性向上を図ることを目指しています。