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LEAR CORPLEA
事業内容
Lear Corporation(以下、同社)は自動車向けに完成したシートシステムと車載電装・電子システムの設計・開発・製造を行う世界的サプライヤーです。同社は座席の完成品や表皮、フォーム、機構に加え、加熱・換気・マッサージなどの快適機能や、高・低電圧の配線・電力分配・コントローラーといった電装品、さらにこれらを動かす組み込みソフトまで幅広く手掛けています。
主要顧客は世界の大手自動車メーカーで、同社は480を超える車名に部品を供給しています。同社の売上は自動車の生産台数と車両ごとの搭載量に依存しており、特に大型車やSUVでは搭載量が多く収益への影響が大きくなります。
同社の事業は大きく「シーティング」と「E‑システム」の二本柱に分かれます。シーティングは完成シート、表皮、フォーム、シート機構や熱快適機能が中心で、E‑システムはワイヤ配線、高電圧バッテリー接続、電力分配ユニットや車内ゾーンコントローラー、組み込みソフトを扱っています。同社は垂直統合や自動化、ハードとソフトの統合力を強みに、電動化や車内データ増加といった市場トレンドを取り込んで成長を図っています。
経営方針
同社は長期的な利益成長と業界トップクラスの収益率を重視する成長戦略を掲げており、シートの「完全シートシステム」で中期的に世界シェア29%を目指しています。2024年の売上高は約233億ドルで、北米が約97.5億ドルを占める一方、地域別では欧州や中国の変動も見られます。資本配分面では、2011年以降の自社株買い累計が67億ドルの枠組みの下で進められており、2024年には4億ドルを取得、残りの買戻し枠は約11億ドル(2024年末時点)があります。また、同社は生産規模と費用を実需に合わせるため、2024年に約1.39億ドルのリストラ費用(関連の非効率費用を含め約1.45億ドル)を計上し、今後12カ月で約7,800万ドルの追加費用を見込むなど、コスト管理を通じたキャッシュ創出にも注力しています。
同社は投資の重点を「シーティング(座席)」と「E-Systems(電装)」の二本柱に置き、差別化により価格転嫁可能な機能や付加価値を拡大しています。シーティングではモジュール化やサーマル(加温・冷却)コンフォート機能により付加価値を高め、ComfortFlexやComfortMaxといったモジュールは部品点数を最大で約50%削減し、乗員への風量を最大40%向上させるとしています。E-Systemsでは配線や接続部品、高電圧のバッテリー接続部品や電力分配ユニット(BDU)に投資し、より高出力や軽量化を実現する垂直統合を進めることで、電動化や車内データ増加に対応する差別化を図っています。
新市場・事業拡大については、グローバルでの生産・設計拠点の最適化を進めています。具体的にはアジア、中央アメリカ、東欧、メキシコ、北アフリカなどでの部品生産能力と低コスト設計拠点の拡充を進め、電動車や大型SUVの需要増に対応することで1台当たりの搭載部品量増加を取り込む計画です。買収も積極的で、座席のサーマル機能拡充を目的としたI.G. Bauerhin(約1.75億ドル、2023年)、生産自動化技術強化のためのWIP(2024年)やStoneShield(2025年)の取得などにより、製品ライン拡大と生産効率の向上を同時に進めています。さらに、車両の電動化率は2025年に約17%が見込まれており(S&P予測)、同社はE-Systemsの搭載比率引き上げでこれをビジネス機会に変える方針です。
技術革新には「IDEA by Lear(Innovative, Digital, Engineered, Automated)」という取り組みで応え、工場のスマート化や業務のデジタル化を推進しています。投資対象は工場の自動化・ロボット化、産業用モノのインターネット(IIoT)、クラウドや人工知能・機械学習を使った生産最適化で、ThagoraやInTouch、WIPなどの買収でこれらの能力を内製化しています。実際の効果としては生産コスト低減や安全性向上、品質と生産性の改善が挙げられており、例として柔軟な自動化や高電圧ハーネスの自動組立技術を取り込むことで、E‑Systemsの生産効率と歩留まりを高めることを狙っています。同社はまた素材面の革新にも取り組んでおり、100%リサイクル可能な代替素材や米国原料のソイフォーム等を導入し、環境負荷低減とコスト競争力の向上を目指しています。