KULICKE & SOFFA INDUSTRIES INCKLIC

時価総額
$25.9億
PER
半導体組立装置とパッケージング材料の大手。ボールボンダー、ウェッジボンダーや2.5D/3D向け先進パッケージ装置を展開。2023年2月に台湾の先端ディスペンシング企業を買収(買収金額約3810万ドル)で事業拡大。アジア太平洋中心にグローバル展開。

事業内容

KULICKE & SOFFA INDUSTRIES INCは半導体の接続や組立工程向けの装置・ツール・消耗品を設計・製造・販売する企業です。同社はワイヤーボンディング装置や先進パッケージング向けの設備に加え、ダイ配置や高精度ディスペンシング機器、部品や保守サービスまでの一連のソリューションを提供しています。

主要な顧客は設計・製造一貫の半導体メーカー、組立請負業者(OSAT)、ファウンドリや電子機器メーカー、車載電子部品関連企業などです。同社の売上は顧客の設備投資や業界の景気に左右されやすく、需要の変動が大きい一方で、2024会計年度は特定顧客が売上の10%を超えることはありませんでした。売上の大半は米国外、特にアジア太平洋地域向けの出荷が中心です。

事業は大きく装置本体とツール・消耗品、アフターマーケット製品・サービスに分かれており、装置はボンディング系や先進パッケージング系が主力です。アフターマーケット製品・サービスはユニット消費に結び付くため比較的安定しており、買収により高精度ディスペンシング事業を取り込んで「その他」の事業領域を拡大しています。製造は外部委託を多用して効率化を図り、各地域に営業・技術サポート拠点を置いて顧客近くでサービスを行っています。

経営方針

同社は成長を確保するために「技術投資」「バランスシートの強化」「株主還元」の三本柱で資本配分を行っています。手元資金(現金・現金同等物・短期投資)は約5億7,710万ドルを保有しており、2024会計年度には自社株を約322.1万株、総額約1.51億ドル買い戻すなど株主還元に積極的です。取締役会は最大8億ドルまでの自社株買いプログラムを承認しており、さらに四半期配当として年間0.80ドルを支払っています。一方で、受注残高は前年の約4.24億ドルから約1.49億ドルへ大幅に減少し、プロジェクトWの中止が約1,500万ドルの減収要因となるなど需要の変動リスクも意識した資金運用を行っています。

同社は重点的に「先進パッケージング」と「消耗部品・サービス(アフターマーケット)」に投資しています。APAMA、APAMA Plus、APTURAなどの熱圧着やハイブリッド接合を含む装置群、KatalystによるフリップチップやWLP対応のリフロー技術、LUMINEXによる高精度ダイ搬送など、装置とツールを同時に開発する点を差別化としています。さらに2023年に約3,810万ドルの現金で取得したAJA(高精度ディスペンス機器)は、ミニ・マイクロLEDやディスペンス市場の拡大に対する戦略的な補完となっており、製品ポートフォリオの幅を広げる具体策になっています。

新市場の開拓では、チップレットや2.5D/3Dパッケージといったヘテロジニアス統合分野を重要な成長機会と位置づけています。チップレットは異なる機能を持つ小さな半導体を組み合わせる方式で、これに対応するための微細接合や高精度配置技術に注力しています。販売面では顧客近接型の営業・サービス拠点をアジア太平洋を中心に整備し、EMSやOSAT、IDMなど顧客の製造プロセスに入り込んだ共同開発や試作評価を通じて採用機会を創出する計画です。加えて、M&Aや選択的投資を通じた非有機的な成長も引き続き実行可能な選択肢として据えています。

技術革新への取り組みは同社の中核戦略であり、研究開発と外部連携を両輪で進めています。大学やコンソーシアム(例:UCLAのCHIPS、ペン州のCHIMES、産学連携コンソーシアム)との協業により、フラックスレスの熱圧着やCuFirstのハイブリッドボンディングなど次世代プロセスの早期実装を狙っています。製品開発だけでなく、現場の技能育成やプロセス検証に投資し、装置とツールを組み合わせた「プロセス全体の能力」を高めることで、価格や単機能の差異ではなく工程全体での優位性を築くことを目指しています。