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Kyndryl Holdings, Inc.KD
事業内容
Kyndryl Holdings, Inc.は、企業の重要なIT基盤の設計・構築・運用を担う世界的なインフラサービス企業です。同社はオンプレミスのサーバやメインフレームから複数のクラウド環境まで、インフラの近代化、統合、日々の運用管理を主力サービスとしています。加えて、AIを活用した「Kyndryl Bridge」などのプラットフォームで運用の自動化や可用性向上を支援しています。
主要顧客は大企業や政府機関などミッションクリティカルなシステムを持つ組織で、CIOやCISOといった上級管理層が意思決定者です。同社は長期の運用契約や管理サービスを通じた継続的な収益を基盤に、コンサルティングや移行プロジェクトなどの一時的な収益も組み合わせて収益を構成しています。
事業は主にコアのインフラ運用(エンタープライズ&メインフレーム含む)、アプリ・データ・AIサービス、デジタルワークプレイス、セキュリティ/レジリエンシー、ネットワーク&エッジの領域に分かれます。これらを横断する形で「Kyndryl Consult」による助言・実装サービスを提供し、クラウド事業者やソフトウェア企業との広範な提携を活用して顧客のデジタル変革を一貫して支援しています。
経営方針
同社は短期的に「収益性の回復」と中長期的に「トップライン成長の再加速」を目指しています。直近の2025年度通期実績は売上高が約$15.1 billionで前年から6%減少した一方、調整後EBITDAは$2.516 billion、当期純利益は$252 millionと前年から改善しており、これらの改善を基盤に成長への転換を図っています。成長に向けた具体策としては、既存顧客への提供範囲拡大と新規顧客獲得を両輪とし、運営効率や利益率の向上に資する「Alliances(提携)」「Advanced Delivery(高度化された提供)」「Accounts(採算改善)」のいわゆる“三つのA”を積極的に推進しています。
重点投資分野はクラウドや自動化、データ・AI、セキュリティ、ネットワークなどで、差別化は長年の運用ノウハウと知的財産にあります。同社は主要なハイパースケールクラウド事業者やソフトウェアベンダーと提携し、数万件のクラウド認定資格や約3,000件の特許に裏打ちされた専門性を強みにしています。提供力の強化では、AIや自動化ツールを組み込んだプラットフォーム「Kyndryl Bridge」を活用して作業の効率化と品質向上を図り、低採算部分の契約は縮小・再交渉するなどしてマージン改善につなげています。会計上の改善策としてはIT機器の耐用年数を5年から6年に延長し、減価償却費の削減で2025会計年度に税引前約$180 millionの改善効果を見込んでいます。
新市場開拓と事業拡大では、コンサルティングと導入を担う「Kyndryl Consult」を成長軸と位置づけ、ハイブリッドクラウドやデータ基盤、生成AI導入支援など高付加価値領域へ注力しています。外部成長の一例として2024年にSkytapを約$45 millionで買収し、ハイブリッドクラウドのサービス群を拡充しました。一方で非中核・低採算の資産は売却する方針で、カナダのSISプラットフォーム売却は約$185 millionの現金収入と$145 millionの税引前利益を生んでいます。資本配分では株主還元の一環として買戻しも実施しており、2025年度は約$94 millionの自己株式取得を行っています。
技術革新への取り組みは製品・サービスの中核であり、同社はAIや機械学習をサービス提供に組み込み、運用の自動化と大規模な知見の横展開で顧客価値を高めることを目指しています。具体的にはIT運用の自動化、データアーキテクチャの整備、セキュリティ/事業継続の強化、エッジやネットワークの近代化に投資するとともに、従業員約73,000名のスキルアップを推進しています。環境・社会面でも目標を掲げており、2040年のネットゼロ達成と2030年までにバリューチェーンを含む温室効果ガス排出量を50%削減する目標を設定している点も、長期的な技術・組織投資の一環と位置づけています。