東京地下鉄JP:9023

時価総額
¥9063.6億
PER
15.6倍
地下鉄9路線を中心とする運輸・不動産・流通・広告事業の最大手。駅商業施設「Echika」や沿線不動産賃貸を展開。連結子会社14社を保有、子会社の商号変更と事業区分改称を2025年4月1日に実施。東京都区部中心の国内展開、海外はベトナム進出。

事業内容

東京地下鉄は、東京都区部を中心に9路線の地下鉄網を運営しており、列車の運行・駅や車両の保守管理、駅施設の管理運営を行っています。日常の輸送サービスに加え、駅や沿線資産を活用した商業施設や不動産事業も展開しています。

主な顧客は通勤・通学や観光で地下鉄を利用する乗客で、運賃収入が同社の収益の中心です。これに加え、不動産の賃貸収入や駅構内の商業・飲食の営業収入、駅や車内の広告収入などが収益を補完し、収入源を多様化しています。

事業は大きく運輸業、不動産事業、流通・広告(ライフ・ビジネスサービス)事業、その他に分かれています。運輸では運行と保守・海外支援、不動産では開発・賃貸・資産運用、流通・広告では駅直結の商業施設運営や広告・情報通信サービスをグループ会社と連携して展開しています。

経営方針

東京地下鉄は中期経営計画「Run!〜次代を翔けろ〜」を掲げ、2028年3月期を目標年とした財務目標を設定しています。具体的には連結ROEを7.7%、連結営業利益を930億円、連結EBITDAを1,740億円に引き上げ、連結純有利子負債/EBITDA倍率を6.3倍(新線を除けば5.2倍)にすることを目指しています。日常の運賃収入の回復に加え、不動産賃貸や駅ナカ商業、広告など非運輸収入の拡大によって収益基盤を多様化し、企業価値の持続的な向上を図ることが同社の成長戦略の中核です。

投資の重点分野は安全性・安定輸送と沿線資産の価値向上に集中しています。激甚化する自然災害対策や防犯カメラの高度化、巡回警備強化といったセキュリティ投資に加え、全駅へのホームドア設置(大規模改良中の南砂町駅を除き2025年度に完了予定)やエレベーター整備などバリアフリー化を進めています。さらに、設備の状態を常時把握して故障を予測する「状態基準保全(AIを活用した故障予知)」や、無線を用いて列車間隔を短くする列車制御システムの仕様統一による運行効率化など、維持管理の高度化で他社との差別化を図っています。こうした投資を通じて「安全・安心で高頻度の輸送」を同社は実現することを目指しています。

新市場の開拓と事業拡大については、都市開発と鉄道ネットワーク強化を両輪に据えています。2024年11月に着手した有楽町線・南北線の延伸工事は2030年代半ばの開業を目指しており、有楽町線延伸部については2025年3月に東武線との相互直通の基本合意を締結しました。海外では約100年にわたる運営ノウハウを活かしてO&M(運行・保守)市場へ進出する計画を掲げ、不動産面では駅徒歩圏や相互直通先沿線まで取得エリアを拡大し、ホテル開発・運営参画など新領域にも挑戦します。加えて、保有資産の売却益を次の開発投資に回す不動産循環型モデルの推進により、事業拡大資金を確保する方針です。

同社は技術革新を重要な成長ドライバーと位置付けています。データ共有基盤を整備し、生成型AIやビッグデータ解析、拡張現実(XR)などデジタル技術を活用して顧客サービスや保全業務を高度化するほか、乗車サービス面では2025年3月からクレジットカードのタッチ決済やQRコードを使った企画乗車券を開始し、後払い乗車サービスの検討も進めています。無人化や自動運転に向けた部分的な自動運転技術(乗務員が先頭車両に乗務する方式)や列車制御の無線化、設備保全のAI化など具体的な導入項目を挙げ、技術で輸送の安定性と顧客利便性を高めることを同社は目指しています。