ラクスルJP:4384

ラクスルは、インターネットを使って伝統的な業界の仕組みを変え、中小企業や個人事業主の経営を支援する事業を展開しています。同社は印刷の受発注プラットフォーム「ラクスル」を中心に、段ボールや印鑑、トートバッグなどのECサイトを運営し、デザインや新聞折込・ポスティングなどの集客支援も行っています。

主要な顧客は国内の中小企業・個人事業主で、顧客からの注文を受けて提携する印刷会社や配布会社に委託する仲介型のビジネスモデルです。同社は販売と仕入の差額に加え、広告やマーケティング支援の手数料、SaaSの利用料など複数の収益源で売上を確保しています。

事業は「調達プラットフォーム」と「マーケティングプラットフォーム」の二本柱で構成されています。調達側はラクスルに加えダンボールワン、ハンコヤドットコム、トートバッグ工房などの受発注サービスを含み、マーケティング側はテレビCMや動画を小ロットで扱うノバセルやホームページ作成のペライチ、放映効果を可視化する分析ツールなどを組み合わせ、広告投資の効率化を支援しています。

同社は「Quality Growth」を掲げ、成長の継続と同時に利益とキャッシュ・フローの創出を重視する経営を目指しています。具体的には売上高だけでなく売上総利益と調整後EBITDAを主要指標に位置づけ、顧客数×ARPU（年間購入者数・年間平均注文回数・平均注文単価）の改善を通じて企業価値の最大化を狙っています。既にインターネット経由で毎日数千件の注文を集める規模があり、このボリュームを活かして高い定着性のある顧客基盤をさらに拡大する方針です。

重点投資はテクノロジー、マーケティング、オペレーションの高度化に置かれており、SaaSや決済・ファイナンス領域へのサービス展開も進めています。差別化の核心は供給側の余剰キャパシティを結び付けるシェアリング型の調達プラットフォームと、小ロットを低コストで実現するオペレーションノウハウです。例えば同社は多面付け印刷による製版コストの按分や資材の共同購買、自社保有機を活用したノウハウ展開、物流網の最適化などで原価低減と品質の安定化を図っています。

新市場開拓と事業拡大では、印刷以外の受発注サービス（段ボール、印鑑、トートバッグ等）や集客支援（新聞折込・ポスティング、ホームページ作成、動画広告の小口運用など）を横断的に組み合わせ、顧客の購買単価と利用頻度を高める戦略を進めています。同社は連続的なM&Aを中長期戦略に掲げており、買収後の統合（PMI）チームを強化して事業間シナジーを創出するとともに、複数のECサイトに分散する顧客IDの統合でクロスセルや新カテゴリの早期立ち上げを加速させる計画です。

技術革新についてはAIとデータ基盤の強化を経営課題の一つに位置づけ、名刺やホームページの自動デザインなど実サービスへのAI適用を進めています。具体的な取り組みとしてはAI研究開発への継続投資、専門人材の採用・育成、顧客行動データの統合による高度な解析体制の構築を行い、需要予測やパーソナライズ、オペレーション最適化に活用します。また、情報セキュリティ体制の強化も並行して進め、データドリブン経営を安全に実行できる基盤整備を推進しています。