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クラシルJP:299A
事業内容
delyは料理や生活情報を中心としたプラットフォーム事業を手掛けています。同社は主力のレシピ動画サービス「クラシル」を軸に、ポイントで購買を促す「クラシルリワード」、商品比較の「クラシル比較」、人材プラットフォーム「クラシルジョブ」、生活情報メディア「TRILL」やクリエイターマネジメントの「LIVEwith」など複数のプロダクトを運営しています。
同社の顧客は、日常的にサービスを利用する一般ユーザー(10代〜50代、特に主婦層や若年層の利用が多い)と、商品やサービスを訴求したい食品・飲料メーカーや小売り、消費財企業などの法人です。収益はネット広告(純広告やアドネットワーク)、タイアップ広告、有料会員料、アフィリエイトやレシート連動のリワード型販促(レシチャレ)、人材紹介の成功報酬、ライブ配信による収益などで構成されています。
事業は単一のプラットフォームセグメントとして運営していますが、機能的には「メディア(認知)」「購買(販促)」「その他」の三領域で展開しています。メディア領域でユーザー基盤と制作力を築き、その基盤を使って購買領域でポイント還元やアフィリエイトを通じた販促を低コストで提供し、その他領域ではライブ配信のマネジメント等で収益化を図っています。
経営方針
同社は中長期の成長戦略として、まず堅牢なユーザー基盤の拡大、購買(販促)領域での事業拡大、そしてM&Aによる非連続成長を三本柱に据えています。具体的には、重要な指標として「クラシルリワード」関連アプリの月間アクティブユーザー(MAU)を掲げており、MAUは2024年第1四半期の約66万から2025年第4四半期には約223万へと急拡大しています。財務面では売上高成長率やNon‑GAAP営業利益・Non‑GAAP当期純利益を主要指標とし、広告市場や販促市場という大きなマーケット(例:日本の総広告費は約7兆6,730億円、国内販促市場の潜在規模は約15兆円)を取り込みながら企業価値の向上を目指しています。
重点投資はユーザー体験の改善とデータを活用した販促ソリューションです。同社は「クラシル」シリーズで高い認知度(20〜50歳で約58.1%、女性は約76.4%)とSNSフォロワー合計約1,200万を持ち、アプリとWebで合計約4,100万のMAUポテンシャルを有しています。これらのユーザーデータ(位置情報や購買情報など)を元に、食品・飲料メーカーや小売企業向けに成果報酬型のリワードマーケティングを提供することで、従来の広告会社とは異なる「購買に直結する効率的な販促」を差別化点としています。現在は食品・飲料の大手ナショナルクライアント約90%をカバーし、小売りでは約3万店舗を網羅している点も強みです。
新市場開拓と事業拡大は、既存のメディア基盤を販促領域へシフトさせることで進められます。広告領域で到達可能と試算する市場規模(約2,700億円)に加え、デジタル化が遅れている販促市場(潜在約15兆円)に対して、リテールメディアやレシート連動のリワード施策などで先行してデジタルソリューションを導入していく計画です。加えてM&A(これまでに4件)を通じて購買領域を中心に外部の能力や顧客基盤を取り込み、買収後は統合プロセス(PMI)のノウハウを活用して、KPI管理や事業効率化でシナジーを創出する方針を掲げています。
技術革新ではデータ基盤とサービス連携の強化に注力しています。具体的にはアプリとWebの行動データを統合してユーザーの購買導線を可視化し、位置情報や購買データを活用したターゲティングや効果検証を行うことで、広告効果と販促効果の両面で改善を図ります。加えて、動画需要の高まりやコネクテッドTVなど新しい配信チャネルに対応した広告ソリューションの整備や、クリエイター運用を含む制作力の強化にも投資を続け、低コストで高効率なプロダクト開発と運用を通じて競争優位を維持していく計画です。