インフォメティスJP:281A

時価総額
¥19.7億
PER
-2.6倍
エナジー・インフォマティクス事業の最大手。NILM技術を核とするSaaSプラットフォームと電力センサー(ienowa、enenowa、hitonowa、BridgeLAB DR)を展開。2016年に国内初のNILM商用化、2018年に東京電力パワーグリッドと共同設立、ダイキンと欧州提携。国内・欧州(英国中心)で展開。

事業内容

インフォメティスは、エネルギーデータとAIを使って家庭や事業所の電力利用を最適化するソリューションを提供しています。電力センサーやデータ収集プラットフォームを通じて電力の「見える化」や蓄電池・EVの自動制御など、月額型のサービスを中心に展開しています。

同社の主要顧客は、賃貸事業者やハウスメーカーといった電力消費者向けの企業、そして小売電気事業者やアグリゲーターなどの電力事業者で、東京電力グループや大手メーカーと協業しています。収益は、センサー販売や導入時の初期設定などの一時的な収入と、プラットフォームやアプリの利用料による継続的なサブスクリプション収入、実証実験・受託開発などの案件収入の三本柱で構成されています。

同社の事業は国内領域と海外領域に分かれ、国内では家庭向けのスマート・リビング(電力の見える化・遠隔制御)と事業者向けのエネルギー・マネジメント(デマンドレスポンスや最適化制御)を提供しています。具体的には家庭向けサービス(ienowa/enenowa/hitonowa)や事業者向けのBridgeLAB DRに加え、健康見守りや不在配達低減、スマートメーター異常検知といった実証開発も進め、欧州ではヒートポンプ最適化などの現地展開を進めています。

経営方針

同社は「エネルギーデータの力で、暮らしの未来を変えていく」をミッションに、サブスクリプション型の事業モデルを軸として成長を図っています。具体的にはSaaS型収益の拡張を経営指標の中心に据え、ARR(年次経常収益:直近の月次経常収益の平均を年換算した指標)を用いて事業成長を評価しています。財務面では第12期に黒字転換を果たし、東京証券取引所グロース市場への上場と公募増資で自己資本を強化済みであり、国内外のエネルギーデジタル市場(出所:富士経済)の規模見通しでは2025年度で約5,003億円、2035年で約9,092億円に達すると見込まれる市場を取り込むことでトップブランドを目指しています。

同社は次世代スマートメーターへの対応や独自の分析技術強化に重点投資しています。次世代メーターの交換は2026年から始まる予定であり、当社の波形センサリング方式と互換性のある計測方式が採用された点を活かしてデータ取得量と解析精度を飛躍的に高める方針です。機器ごとの消費を推定するNILM(非侵襲で機器を識別する技術)や電力の最適制御、焼損予兆検知・広域需要内訳分析・リソースアグリゲーションといったサービスに研究開発投資を集中させ、特許出願や知財体制の強化で差別化を図っています。同社は優秀な人材の採用と社内研修を進め、権利化を迅速に進めることで競争優位を確保することを目指しています。

同社はアライアンスを通じた事業拡大と海外展開を積極化しています。東京電力グループや関西電力グループ、日立やダイキン、博報堂DY、伊藤忠エネクスなどと提携し、秘匿性の高い現場データの継続的取得体制を構築していることを武器に、家庭向け(ienowa/enenowa/hitonowa等)と事業者向け(BridgeLAB DR 等)の接点を広げています。欧州では英国に子会社を設立して実証実験を行い、ヒートポンプ最適化などの現地ソリューションで実績を積み上げ、欧州全体での本格展開を進めることで、ヘルスケアや社会インフラ、公共・教育、広告といった電力データの応用先へ横展開することを目指しています。

同社は技術革新を継続的に推進しています。AI(機械学習)を軸にした解析精度の向上、クラウド上のプラットフォーム整備、蓄電池やEVの自動制御連携などを具体的施策として進めており、国際標準化にも貢献しています。例えば当社のNILMセンサーデバイスに関する計測グレードはIECの技術仕様書(IEC TS63297)として採択されており、標準準拠を通じた海外普及も視野に入れています。加えて内部管理・ガバナンスの強化や継続的なキャッシュフロー改善を図ることで、技術投資と事業拡大を両立させることを目指しています。