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アクセルスペースホールディングスJP:402A
事業内容
アクセルスペースホールディングスは、連結子会社を通じて小型衛星の開発・製造・打上げ後の運用と、衛星で撮影した地球観測画像の販売・解析サービスを展開する持株会社です。同社は「宇宙を日常の場所にする」ことを目指し、顧客向けの専用衛星プロジェクト支援と、自社で運用する衛星コンステレーションによるデータ提供の二本柱で事業を行っています。
同社のAxelLiner事業は主に政府系機関が主要顧客で、近年の売上は政府案件が大半を占め国内収益が中心です。一方、AxelGlobe事業は民間企業も多く利用し、画像販売や定期モニタリング、解析・コンサルティングなど複数の収益源を組み合わせて収入を得ています。また、持株会社として連結子会社への経営管理報酬も収益の一部になっています。
事業セグメントはAxelLinerとAxelGlobeの二つに分かれ、AxelLinerでは衛星の設計から製造・打上げ・運用までをワンストップで提供し、手続きや運用の自動化・標準化を進めて効率化を図っています。AxelGlobeでは複数機の衛星を連携運用する体制を活かし、オンデマンド撮影、定期モニタリング、緊急撮影、アーカイブ販売、広域モザイク生成、解析・コンサルティングなどのサービスをウェブプラットフォームや代理店網を通じて提供しています。
経営方針
同社は「宇宙を普通の場所にする」というビジョンの下、二つの事業軸(AxelLinerによる小型衛星の受託開発・製造・打上げ・運用と、AxelGlobeによる自社運用の地球観測データ提供)を両輪に成長を目指しています。具体的には、2025~2028年度に実証衛星を累積で6機打上げすることを目標とし、2028年度末までに運用機数を14機に拡大して撮影頻度・範囲を高める計画です。さらに、2027年度に中分解能機「GRUS-3」を最大7機追加して1日あたり最大約230万km²の撮影能力を確保し、2028年度以降は高分解能衛星3機を投入して将来的に地上分解能50cm未満の達成を目指しています。
同社は競争優位の源泉として、衛星本体の「汎用バス」設計と顧客との窓口を一本化するソフトウェアの整備に重点投資しています。バスの量産化や並行製造を進めるためにミスミなど製造業者と提携し、従来の設計開始から打上げまで2~3年かかっていた工程を最短1年へ短縮することを目標としています。加えて、打上げ後のユーザー体験を簡素化する「AxelLiner Terminal」により、顧客が簡単な入力で衛星構成や概算コスト・スケジュールを把握できる環境を整備し、受注から運用までの効率化を図っています。
新市場開拓では、部品や機器の軌道上実証を手軽に行える「AL Lab」と、顧客のミッションを丸ごと提供する「AL Pro」の二つのサービスを通じて顧客層を拡大します。産業別には報道、金融、環境などの用途に合わせた解析機能や撮影権を組み込んだソリューションを作り、国内外の販売代理店や解析企業との連携で販路を広げる方針です。政府系案件や公的補助(NEDO等)も重要なパイプラインとなっており、資金面では2023年の第三者割当増資で約62.4億円を調達し、2025年の上場でさらに資金を確保するなど、事業投資を支える資金調達も並行して進めています。
技術革新では、実機による検証と継続的な改良を重視しています。実証機「PYXIS」で得た故障モードの分析を受け、改修策をGRUS-3α(2025年6月打上げ)へ適用して軌道上で検証中であり、このフィードバックを次世代機や量産体制に反映させます。また、中分解能と高分解能の衛星を連携運用して広域観測から詳細観測へつなぐ「協調運用」を目標に、画像解析や改ざん防止を含むデータ品質の向上にも投資しており、技術とサービスの両面で差別化を図っています。