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ZenmuTechJP:338A
事業内容
ZenmuTechは、独自の秘密分散技術「ZENMU-AONT」を軸に、データを無意味化して分散保管する「ZENMU」シリーズと、暗号化されたまま計算を行う秘密計算ソリューション「QueryAhead」の開発・提供を行っている企業です。同社は「データの保護と利活用」を掲げ、端末やクラウドを問わず安全にデータを扱える仕組みを事業の中心に据えています。
同社の主要顧客はシンクタンク、コンサルティングファーム、金融機関、ITベンダーなど多様で、特定業界や企業規模に限定せず導入が進んでいます。収益はPC端末ごとのライセンス販売が基本で、一括販売のフロー型と、ライセンス+保守+アップデートを含むサブスクリプション、保守単独の三形態があり、サブスクリプションや保守はストック収益として安定に寄与しています。
事業は情報セキュリティの単一セグメントで、製品ラインは主に三つに分かれます。エンドポイント向けの情報漏洩対策「ZENMU Virtual Drive」、技術を組み込むための開発キット「ZENMU Engine」(OEM組み込みやロイヤルティ収入を伴う)、そして共同研究を基に進める秘密計算の「QueryAhead」です。加えて、Windows Embedded OSのカスタマイズやシンクライアント基盤の最適化といった受託コンサルも提供し、代理店経由で大規模案件を獲得しながら約10万人の利用者基盤を築いています。
経営方針
同社はライセンス数の拡大を通じて安定的な収益基盤を確立することを成長戦略の中心に据えています。直近の業績では、連結売上高が2022年12月期の232,282千円から2024年12月期には648,942千円へと約2.8倍に拡大しており、特に秘密分散を核とする「ZENMU Virtual Drive」が主力となって売上を牽引しています。市場環境としてはエンドポイントセキュリティ市場が2023〜2030年に年平均成長率7.4%で拡大し2030年に288億米ドル規模が見込まれること、機密計算(Confidential computing)市場が2024年に160〜180億ドル、2026年に520〜540億ドルへ急拡大すると想定される点を踏まえ、同社はライセンス+保守を中心としたサブスクリプション比率を高め、ストック収益化を進めることで中長期の収益成長を目指しています。
同社は重点投資分野として、端末上のデータを無意味化して分散保管する秘密分散ソリューション群と、暗号化されたままデータを処理できる秘密計算技術に注力しています。「ZENMU Virtual Drive」についてはVDI(仮想デスクトップ)と比べて導入費用・運用費用が低いことやネットワークに依存しない作業速度を強みとして、VDI導入済み企業への置き換え提案やVDI向けの機能制限版を代理店経由でオプション提供するなど、価格と利便性に基づく差別化を具体的施策として進めています。一方、OEM向けの開発キット「ZENMU Engine」を通じてドローンや監視カメラ、ウェアラブル機器などIoT領域への組み込みを図り、製品の適用範囲を広げてロイヤルティやライセンス収入の多様化を狙っています。
新市場開拓と事業拡大は国内の官公庁・地方自治体や中小企業向けの販売代理店戦略に加え、海外展開の強化を明確な方針としています。具体的には米国の大規模展示会へ出展し大手シンクタンクと共創しながら適用領域をリサーチするほか、ドローン向けの「インテグリティ・ドローン」やAI監視カメラ分野でのOEMパートナー開拓を進めています。また、秘密計算ソリューション「QueryAhead」はまず材料開発や製造業での適用を優先し、企業と共同でプロトタイプ開発と概念実証(PoC)を行った上で商用化に移行する計画です。受注の季節変動(特に3月と12月に受注が偏る傾向)があるため、代理店インセンティブやサブスクリプション拡大で受注の平準化も図ろうとしています。
技術革新については産業技術総合研究所との共同研究を含め、秘密分散技術と秘密計算技術の両輪で研究開発を加速しています。技術の進め方は、用途の有効性を検証して試作をつくる段階、目的効果を確認する概念実証を行う段階、その後に実際の商用ソリューションを開発する段階へと段階的に進める方針です。クラウド上のデータ保護へも対応できるよう5G時代を見据えた製品改良や、顧客サポート体制の強化、優秀な技術者の採用・育成による組織力の向上にも投資を続け、技術優位性を収益拡大につなげることを目指しています。