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SynspectiveJP:290A
事業内容
Synspectiveは小型合成開口レーダー(SAR)衛星「StriX」シリーズによるコンステレーションを構築し、全天候・昼夜で取得できる衛星データとその解析ソリューションを提供しています。同社は衛星の開発・製造・運用と、取得したデータを使った画像販売や自動解析による業務向け情報提供を一貫して行っています。
主要な顧客は各国の政府機関(とくに防衛・防災分野)が中心で、損害保険、インフラ・建設、資源・エネルギーなどの民間企業にも広がっています。収益は衛星データの販売と、解析結果を業務で使える形にしたソリューション提供(解析料や導入コンサルティング)で成り立ち、プラットフォーム経由の契約や定期解析でリカーリング収益を目指しています。
事業は衛星データ事業の単一セグメントで、同社の小型衛星は低コスト化により多数機の運用が可能で高頻度観測を実現しています。製品ラインは(1)データ販売:Webプラットフォームでの撮像データ販売、(2)ソリューション:地盤変動モニタリングや洪水被害分析、森林や洋上風力向けの解析など多様な業務向けサービスで構成され、解析技術とデータ取得能力の連携で付加価値を高めています。
経営方針
同社は堅実な成長を目指しており、衛星コンステレーションの拡大を通じて収益基盤を強化しています。短期的には日本政府向けのデータ販売と補助金収入を活用して安定した基盤を築き、2025年末に軌道上6機、2026年末に約11機、2028年以降に30機以上のコンステレーションを目標としています。経営の進捗は総収入(売上と補助金の合算)、衛星運用機数、受注額・受注残高を主要な評価指標として管理しており、これらの数値を増やすことで継続的なリカーリング収益を確保する方針です。
重点投資分野は衛星の量産体制と解析ソリューションの両輪です。衛星製造では神奈川県大和市の工場(賃貸面積8,594.52㎡)を2024年9月に本格稼働させ、年産最大12機規模の量産能力を見込んでいます。製造面では衛星バス部材は実績ある供給先から調達し、SARペイロードは特注で確保、組立はセーレンや東京計器と分業して効率化を図っています。差別化戦略としては同一衛星で高分解能(スポットライトで0.25m)と広域撮像(ストリップマップで他社比10〜50倍の撮像域)を切り替え可能にし、取得データと自動解析を組み合わせたソリューションを自社内で開発・提供する点を強みにしています。
新市場開拓と事業拡大は段階的に進めています。短期は国内の防災・防衛需要を軸に公共案件や政府補助を取り込み、中期は既存の海外パートナー網(27か国・地域で34のパートナー)を活用してアジアを中心に政府向けデータ販売を拡大します。さらに、コンステレーションが30機規模に達した段階では「1時間以内にデータと解析結果を提供する」体制を整え、余剰撮像キャパシティを民間向けソリューション(インフラ保守、資源・エネルギー、保険・金融など)に転換して高収益化を図る計画です。資金面では上場や政府ファンドの採択(商業衛星コンステレーション加速化の公募で採択)を踏まえつつ、増資や融資で打上げ・製造資金を確保する方針です。
技術革新への取り組みでは、衛星の世代改良と解析技術の高度化に継続投資しています。機体・アンテナ設計や撮像モードの改良に加え、第3世代機では1機当たりの理論撮像枚数を2024年型の15枚/日から将来的に40枚/日へ引き上げる想定で、衛星間通信などの追加機能や自動解析パイプラインの整備も進めています。サプライチェーンの複線化や量産向け治具・検査設備への投資、人材面ではグローバル採用による技術人材の確保と組織的学習を強化し、規制対応や情報セキュリティの体制整備も並行して進めることで、持続的な技術優位性の維持を目指しています。