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James Hardie Industries plcJHX
事業内容
James Hardie Industries plcは、住宅や商業建築向けの耐久性の高い外装・内装建材を製造・販売する企業です。主力は繊維セメントを使った外装サイディングや内装用ボードで、欧州向けには繊維石膏製品も扱っています。
同社の主要な顧客は建材卸や販売店、木材商、住宅建設業者や工事業者で、北米、オーストラリア・ニュージーランド、欧州が中心市場です。販売は主に流通チャネルを通じて行いながら、ホームセンターや専門小売、大口顧客への直接供給や住宅所有者・設計者へのマーケティングで一次需要の拡大も図り、収益を確保しています。
事業は地域別のセグメントに分かれており、北米向け繊維セメント、アジア太平洋向け繊維セメント、欧州向けの建材(繊維石膏含む)を中心に展開しています。各セグメントでは新築向けと改修向けの外装材や内装ボード、高付加価値製品を揃え、専任の営業・技術チームが現場での助言や顧客サポートを行って差別化を図っています。
経営方針
同社は地域別に明確な成長目標を掲げ、収益拡大と利益率向上を両輪で追求しています。具体的には有機売上成長の目標をAPACで11%以上、欧州で6%以上、北米で11%以上と定め、欧州のファイバーセメント売上は年率25%以上の成長を目指しています。収益性面では営業利益率(EBIT Margin)をAPAC/北米で27〜32%、欧州で13〜18%に引き上げることを狙い、短期・長期のインセンティブ(STI/LTI)は主に主要需要成長(PDG)とEBIT Marginに連動させて経営目標と株主価値創出を結び付けています。直近の3年実績では欧州の有機成長は目標を上回る9.5%、北米は12.2%で目標達成・上回り、APACは10.1%と目標にわずかに届かなかった一方、EBIT MarginはAPAC29.0%、北米29.6%で目標範囲を達成・上回りました。
成長実現に向けた重点投資は生産能力と収益性改善に集約されています。米アルバマ州プラットビルでの能力増強やマサチューセッツ州ウエストフィールド拠点の立ち上げなど設備投資を進めるとともに、LEAN/Hardie™ Operating System(HOS)によるコスト削減を通じて営業利益率向上を図っています。製品差別化では同社が開発したセルロース強化ファイバーセメントやColorPlus(色付き外装材)といった高付加価値製品に注力し、北米ではColorPlusのボリューム成長目標を15%超、マーケティング施策でColor売上を20%押し上げる計画を掲げています。マーケティングの成果としては会員プログラムが前年同期比+26%増、ウェブサイトの刷新でブランド認知・リード獲得を高めた実績があります。
新市場開拓と事業拡大では、木造(フレーム)建築が主流の地域やレンガ・モルタルから木造へ移行可能な市場を中心に地理的拡大を図っています。買収・統合による事業ポートフォリオ強化も戦略の一部で、The AZEK Companyとの合併(申請中)は北米での製品ラインとチャネルを拡充する狙いがあり、提案条件としてAZEK株主には現金US$26.45と1.0340株の同社普通株が支払われることが示されています。ただし、この取引は競争当局の審査やハート・スコット・ロドノ法の待機期間等の条件に依存しており、完了しない場合のリスクも開示されています。
技術革新と安全・ESGの取り組みは経営戦略の基盤です。研究開発では特許や機密技術を用いた製品改良を継続し、イノベーションに関する商業機密指標は各地域で「期待通り」を達成しています。安全面では「Zero Harm(ゼロハーム)」を掲げ、DART(労働災害による休業・制限日数)を指標としてAPAC・欧州・北米に目標値を設定し(例:APAC FY25目標0.07、欧州0.43、北米0.73)、経営者報酬にも安全指標を連動させています。加えてTCFDに沿った気候関連開示やScope 3削減戦略を進め、CDPスコアはB-からBに改善するなどESG対応を強化しています。これらの技術・文化的投資を通じて、同社は持続的な成長と収益性の両立を目指しています。