Informatica Inc.INFA

時価総額
$74.8億
PER
クラウド型データ管理ソフトの大手。AI対応のIDMCプラットフォームとIPU消費課金モデルを展開。2023年にデータプライバシー企業を買収、平均契約期間は約2年(2024年)。北米中心にグローバル展開、展開国数は30超。

事業内容

Informatica Inc.は企業のデータを集め、整理し、使いやすくするクラウド型のデータ管理プラットフォームを提供しています。 同社はクラウドサブスクリプションと自己管理型のライセンスを中心に、利用量に応じた課金(IPUやFlex IPU)も組み合わせた契約形態でサービスを販売し、クラウド版は契約期間にわたって収益を計上しています。

同社の主要顧客は大企業の情報システム部門やデータ部門(CIOやCDO)で、分析やAI、クラウド移行、データガバナンスといった重要プロジェクトで採用されています。 販売は自社の直接営業に加え、デロイトやアクセンチュアなどのSI、AWS・Azure・Google Cloud・Oracleといったクラウド事業者、再販業者などのパートナー経由でも行い、既存顧客の利用拡大(“land and expand”)で収益を伸ばしています。

事業の中身は従来のオンプレ向け製品(例:PowerCenterやPowerExchange)に加え、クラウドデータ統合、アプリケーション統合、データ品質・ガバナンス、エンタープライズデータカタログ、マスターデータ管理(MDM)、カスタマーデータプラットフォーム、データプライバシー管理など複数の製品ラインで構成されています。 同社はクラウド重視の戦略に舵を切り、製品のクラウド化とパートナーエコシステムの強化に投資して市場拡大を図っています。

経営方針

同社はクラウド中心の成長を目指しています。実際にサブスクリプション収入は2022年の8億6,760万ドルから2023年の10億680万ドル、2024年は11億1,017万ドルへと着実に拡大しており、契約の平均期間は約2年、ほとんどの顧客が年次前払いで契約しています。資本配分でも株主還元を行っており、取締役会が最大4億ドルの自社株買い枠を承認、2024年12月31日時点で約1億320万ドルを市場で取得しています。

同社の重点投資分野はクラウド向け製品とAI機能で、研究開発費は2024年に約3億1,520万ドルを計上しています。差別化の核は「IDMC(Intelligent Data Management Cloud)」というクラウドネイティブのプラットフォームと、データ処理を自動化するAIエンジンのCLAIREです。さらに、従量課金の指標として導入したInformatica Processing Units(IPU)や、2023年に導入した年次消費型のFlex IPUなどの価格モデルで柔軟性を提供し、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、OracleといったハイパースケーラーやDeloitte/AccentureなどのSIと協業することでマルチクラウド・ハイブリッド環境での中立性を打ち出しています。

新市場開拓と事業拡大では、既存顧客の「拡張(land‑and‑expand)」と新規顧客獲得の両面で成長を図っています。サブスクリプション顧客のうち2024年末時点で約54%は過去に同社の永続ライセンスを持たなかった顧客であり、新規獲得が進んでいることを示しています。地域面ではEMEAやアジア太平洋への浸透を強化する計画で、業界別の営業体制や業務部門(ライン・オブ・ビジネス)を狙ったGo‑to‑Market投資を進めています。買収面では2023年にデータプライバシー企業を取得するなど、機能拡充によるクロスセル・アップセルを狙う施策も行っています。

技術革新への取り組みは継続的なR&D投資に基づいており、CLAIREを中核とした生成AI機能(CLAIRE GenAI、CLAIRE GPT)で自然言語インターフェースや数千のデータ管理タスクの自動化を進めています。加えて従来のオンプレ製品からの移行を支援するツール(例:PowerCenter Cloud Edition)を提供し、既存の保守契約や自営型サブスクリプションからクラウドへの移行を促進しています。同社はこれらの技術投資を通じてクラウド専業モデルへの転換を加速し、長期的な市場拡大と運用効率の向上を目指しています。