IHS Holding LtdIHS

時価総額
PER
通信インフラ事業のアフリカ最大手。共同利用タワー、コロケーション、24時間稼働のNOC運用、電源ソリューションを展開。2024年4月にペルー子会社をSBA系へ売却。ナイジェリア、コートジボワール、カメルーン、ルワンダ、南アフリカ、ザンビア、ブラジル、コロンビアで展開。

事業内容

IHS Holding Ltdは、新興国を中心にモバイル通信の基盤となる共有通信インフラを所有・建設・運営し、携帯事業者にそのスペースやサービスを賃貸する事業を展開しています。同社は塔を他社と共有するコロケーションや新規サイトの建設、屋内向けの配信設備や光ファイバー接続、場合によっては第三者の塔の保守・管理といった一連のサービスで通信事業の拡大を支えています。

主要顧客は各国の大手移動体通信事業者(MNO)で、長期賃貸契約や設備追加による継続的な受託収入が収益の柱です。同社はアフリカを中心に中南米にも展開しており、テナント数やコロケーション率を高めることで収益性とキャッシュフローの拡大を図っています。

事業は地域別に四つのセグメントで管理しており、主な製品ラインは所有塔の賃貸(コロケーション)、リース改定や新規サイト建設、屋内配信設備、光ファイバー、そして発電や保守を含む運用サービスです。特に電力インフラが脆弱な市場では独自の電源管理や24時間体制の運用監視センターを活用して稼働率とサービス品質を確保し、既存資産の利用効率向上で利幅と現金創出を進めています。

経営方針

同社は既存資産の稼働率を高めることで収益とキャッシュフローの成長を図っています。具体的には、既存の塔に複数の通信事業者の機器を載せる「Colocation(共置)」や、顧客の追加設備に対応する「Lease Amendments(賃貸条件の変更)」、および新規塔の建設を主要成長ドライバーと位置付けています。2024年末時点で59,343のテナントを抱え、コロケーション率は1.51倍、創業以来に建設した新規サイトは1万を超え(累計約10,800サイト)、直近三年間で12,929テナントの増加と3,442の新規サイト建設実績があります。2024年3月に開始した戦略レビューでは、調整後EBITDAとキャッシュ創出の改善、資産や市場の選別、そして余剰キャッシュを主に債務削減に充てる方針などを検討しており、同社は財務健全化と株主価値の向上を目指しています(2024年12月末の負債は約39億ドル、現金は約5.78億ドル)。

同社は投資の重点分野で差別化を図っています。まず運用面では現地に展開する24時間監視の運用拠点(NOC)を強みとし、2024年末でサイトの約81%を遠隔監視して品質を担保しています。発電・電源管理も競争優位の一つで、アフリカ市場を中心に再生可能エネルギーやバッテリーを組み合わせてディーゼル依存を下げる代替電源を導入し、選択的な撤去によるコスト削減と運用効率化でマージン改善を図っています。同社はまたブラジルでのFTTHやナイジェリアでのFTTTなど、光ファイバーや小型基地局、DAS(屋内分散アンテナ)や将来的にはデータセンター等の隣接サービスへ投資することで、単なる塔保有企業以上の付加価値を提供する差別化を目指しています。

新市場開拓と事業拡大については、成長性とスケール獲得を重視する厳格な投資基準を適用しています。これまでナイジェリア、コートジボワール、カメルーン、ルワンダ、南アフリカ、ザンビア、ブラジル、コロンビアといった計8市場で事業を展開し、対象市場は合計で約7.27億SIMをカバーしています。市場参入は「国別魅力度」「戦略的重要度」「投資回収性」の評価を通じて判断し、意味のある規模が見込めない市場は避ける方針です。業界全体では2023–2028年でアフリカに約21,000の新塔と約98,000の新たなサービスポイントが必要と見積もられており、同社は既存顧客との関係や追加契約によるオーガニック成長と、条件が合えば選択的なM&Aでの拡大を組み合わせて対応しようとしています。

技術革新への取り組みでは、運用自動化と環境負荷低減を両立させることに注力しています。現行のNOCと遠隔監視で得る電力稼働状況や燃料残量、設備温度などのデータを活用し、初期段階ながら人工知能(AI)を導入して故障予測や運用最適化を進めており、ディーゼル発電への依存低減と稼働率向上を目指しています。環境面では「Project Green」を通じ、2021年を基準にScope1・Scope2の電力量当たり排出強度を2030年までに50%削減する目標を掲げ、ナイジェリアやカメルーン、コートジボワール、ルワンダ、ザンビアなどでグリッド接続や太陽光・蓄電池の導入を進める計画です。これらの取り組みは運用コストとカーボン負荷の双方を改善し、長期的な競争力強化に寄与することを同社は目指しています。