iHeartMedia, Inc.IHRT

時価総額
$4.9億
PER
オーディオメディア事業の最大手。ラジオ放送と自社デジタルプラットフォーム(500超プラットフォーム)やポッドキャスト(最大手、月間約7500万人)と広告テックを展開。2024年12月20日の包括的債務交換実施。米国展開。

事業内容

iHeartMedia, Inc.は米国で最大規模のオーディオメディア会社で、地上波ラジオの運営を軸にデジタル配信やポッドキャスト、ライブイベントを組み合わせたサービスを展開しています。同社はラジオ局の放送とiHeartRadioを中心とするスマホ・ウェブ配信で広い聴取者基盤を持ち、番組制作とタレントを通じて"仲間"のような関係を築いています。

主要な顧客は広告主で、地域の中小企業から全国規模のブランドや広告代理店まで幅広く広告枠を買っています。同社は放送広告の販売を本柱に、デジタル配信やポッドキャストの広告、イベントのスポンサー収入、サブスクリプションや有料サービスなどで収益源を分散しています。

事業は大きく放送事業、デジタル・ポッドキャスト事業、広告技術と計測、イベント事業に分かれています。放送は地域密着の番組と人材でリスナーを集め、デジタルはiHeartRadioやポッドキャストで聴取時間を伸ばし、広告技術はターゲット設定や自動化された広告販売、計測で広告主への訴求力を高める役割を果たしています。

経営方針

iHeartMediaは放送ラジオを基盤に、デジタルとポッドキャストを組み合わせたマルチプラットフォーム戦略で成長を狙っています。同社はラジオ聴取者数で業界トップ(次点の倍以上)という規模を生かし、放送中心の「Multiplatform Group」だけで2022年に約25.97億ドルの収入をあげ、デジタル部門でも約10.22億ドルを計上するなど、既存の強みを広告収入拡大に結び付けることを目指しています。とはいえ、2024年の営業キャッシュフローは7130万ドルにとどまり、フリーキャッシュフローはマイナス約2616万ドルと前年から大幅に落ち込んだため、同社は収益性とキャッシュ創出の両立を改善することを重視しています(2023年は営業CF約2.13億ドル、FCF約1.10億ドル)。

重要投資分野は広告技術とコンテンツの両輪です。同社はポッドキャストとストリーミングを横断して広告を届けられる技術基盤を強化するために、計測や配信に強い企業を買収・統合しており、これにより「放送/デジタル/ポッドキャスト」を一気通貫で売れる点を差別化要素にしています。例えば自社プラットフォームiHeartRadioはデジタルリスニング時間で競合の約5倍の規模を示し、ソーシャルのファン・フォロワーは約3.35億人、スポーツ系のネットワークで月間約7500万人のリーチがあることなど、規模の経済を広告提案に活かす施策が中心です。また設備とITへの投資も継続しており、2024年の資本支出は約9760万ドル(うちマルチプラットフォームで約5220万ドル、デジタルで約2250万ドル)を割り当てて実行しています。

新市場開拓や事業拡大では、イベント、スポーツ、コネクテッドカーやスマートスピーカーなど接続機器領域への展開を加速しています。同社はライブやバーチャルの大型イベントを運営し、2024年の主要フェスでは約700億件分のソーシャル・インプレッションを生み出すなどコンテンツ商流の拡充に注力しています。広告クライアント基盤の拡大も課題で、現在約4.4万の直接クライアントを持つ一方で、テクノロジーを活用してより小規模な広告主を取り込むことで顧客数を大幅に伸ばすことを目指しています。資金面では放送塔等の資産売却とリースバックやBMI投資の売却(2024年に約1.014億ドルの収入)などを活用し、債務再編(2024年12月の包括的な債務交換)後の資本構成と流動性の安定化を図っています。ただし放送事業の買収や資産処分はFCC規制や反トラスト審査の影響を受け得る点も織り込んでいます。

技術革新への取り組みでは、広告のターゲティング精度と効果計測を高めるためにデータ基盤・計測ツールの整備を進めています。時間帯や個別ユーザーに応じて広告を差し替える仕組みや、放送・配信・ポッドキャストを横断して広告の到達や成果を追える計測が、同社の差別化の核です。同社は人工知能(AI)を業務に導入しており、AIを使った制作支援やレコメンド、広告最適化を積極的に試験・導入する一方で、NISTのフレームワークを参照したサイバーセキュリティ体制や外部委託先の管理強化といったリスク管理も並行して行い、技術で競争力を高めつつ安全性と信頼性の確保を目指しています。