Ivanhoe Electric Inc.IE

時価総額
$15.5億
PER
蓄電システムとデータ処理の有力企業。VRFBやリチウム蓄電、長期データ処理、ソフトウェアライセンスを展開。2023年7月にマアデンが$127.1Mを出資、約48,500km2の探査JVを設定。米国・中国・カナダ・中南米で展開。

事業内容

Ivanhoe Electric Inc.は再生可能エネルギー向けの蓄電システムを設計・開発・製造する企業です。同社は製品販売に加えて、蓄電ソリューションの導入や運転・保守(O&M)、ソフトウエアのライセンス供与や地質・探査データの処理サービスも提供しています。

主要顧客は鉱山会社、電力事業者、エネルギー開発会社などで、機器の売買や長期契約によるサービス収入、共同事業からの収益で事業を成り立たせています。同社は単一納品の短期契約は納品時に収益を認識し、データ処理やソリューション提供といった長期契約は進捗に応じて段階的に収益を認識しており、支払い条件は概ねネット15日です。

事業は大きく蓄電、データ処理・ソフトウエアライセンス、クリティカルメタルの探索・開発の三つのセグメントに分かれています。同社は自社製の蓄電システムとそれに伴う運用サービス、Typhoon装置と解析ソフトによる探査データ処理、さらにMa’adenなどとの共同探査や資源プロジェクトへの出資を通じて事業ポートフォリオを拡大しています。

経営方針

Ivanhoe Electricは、「探査技術」と「蓄電技術」を組み合わせて成長を図ることを中核戦略としています。同社は資本効率を高めるために大手パートナーとの戦略的出資やジョイントベンチャー(JV)を通じて探査規模を拡大する方針で、実際にサウジアラビア関連ではMa’adenによる127.1百万ドルの戦略的出資を受け、同社がMa’aden JVへ66.0百万ドルを出資しています。これらの取引により自己資本を補強しつつ、新たな鉱床の「経済的に実行可能な資源(Designated Project)」の発見を目指しています。市場面では、2024年6月30日時点の非関係株主保有時価総額は約9.18億ドル、発行済株式数は2025年2月27日時点で132,565,318株となっており、外部資金の調達力も一定の基盤があります。

重点投資分野は銅やその他の重要金属の探査、エネルギー貯蔵(特にVRB=レドックスタイプのフローバッテリー)、およびデータ処理・ソフトウェア事業です。同社は独自の探査装置「Typhoon」を保有し、その装置販売や運用を通じて探査効率を高める差別化を図っています。例としてMa’aden JV向けにTyphoonユニット3台の購入契約があり、総額は約1,200万ドルでした。また、蓄電システムは製品販売だけでなく長期の運用・保守(O&M)やソフトウェアライセンスを組み合わせたソリューション収益化を進めている点が特徴です。

新市場の開拓では、サウジアラビアで約48,500平方キロの候補地を対象とするMa’adenとの50/50探査JVをはじめ、2024年5月に発表したBHPとの探索アライアンスで米国内の「Areas of Interest」を共同で探索するなど、大手と組むことで土地アクセスや資金面のハードルを下げています。中国では2024年10月にRed SunとVRB ChinaのJVを設立し、現地での蓄電事業体制を再構築しており、こうした地域ごとのJV戦略でリスクを分散しつつ事業拡大を図っています。Ma’aden JVは当初5年の探査期間(延長でさらに5年)を想定しており、段階的に成果を判定して権利関係を移行する仕組みを採っています。

技術革新への取り組みは経営戦略の重要な柱です。同社はTyphoonなどの探査ハードウェアに加え、取得データを処理するソフトウェアや解析技術を組み合わせることで「発見率」を高めようとしており、製品化した蓄電システムについてもコスト基準の進捗認識を用いて長期契約から安定的な収益を確保するモデルを採用しています。さらに、VRB関連の事業再編や売却・出資による資本効率の改善を実行しており(例:VRB ChinaのJV化による持分会計への移行)、技術の商業化と資産流動化を両輪で進める姿勢が鮮明です。