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HEXCEL CORPHXL
事業内容
HEXCEL CORPは高性能の炭素繊維や樹脂を用いた複合材料と、それを使った構造部材の設計・製造を主力とする企業です。同社は航空機の軽量部材やエンジン周辺部品、宇宙・防衛向けの構造部品に強みを持ち、産業用途向けの材料も生産しています。
売上の大半は航空機メーカーやそのサプライヤー向けの長期供給契約によるもので、商用航空向けが最も大きく2024年は約63%を占めました。同社はエアバスやボーイングといった大手と大口取引を行っており、宇宙・防衛分野も重要な収益源になっています。
事業は大きく複合材料と付加価値製品の二つのセグメントに分かれます。複合材料部門は炭素繊維や樹脂含浸材、ハニカム状の芯材などの基材を自社で生産し、付加価値製品部門は切削や組立などの工程を経て航空機部品や回転翼用ブレードなどを納入しています。同社は原料から最終部品までの垂直統合と厳格な品質管理、長年の顧客認証の蓄積を競争上の強みとしています。
経営方針
同社は堅実な成長と株主還元の両立を目指しています。2024年の売上高は19億0300万ドルで前年の17億8900万ドルから拡大し、商用航空向け売上は11.8%増の11億9420万ドルと回復基調にあります。一方で営業利益率は2023年の12.0%から2024年は9.8%に低下しましたが、同社は営業キャッシュフロー2.899億ドル、フリーキャッシュフロー2.029億ドルを確保しつつ、株主還元策として2024年に3,649,310株を平均68.49ドルで買い戻し総額2.522億ドルを実行、同年の配当は1株当たり0.60ドルへ引き上げています。資金面では借入枠が7.5億ドルのリボルビングクレジットファシリティを保有し、総負債は約7.007億ドル、現金は1.254億ドルで、必要に応じた借入と内部資金で成長投資と配当・自社株買いの両立を図っています。
同社は商用航空(売上の約63%)、宇宙・防衛(約30%)を重点市場とし、これらでの差別化を目指しています。差別化の中核は原材料から最終部材まで手掛ける縦型統合のものづくりで、ポリアクリロニトリル由来の炭素繊維や各種樹脂システムを自社生産し、2023〜24年は生産した炭素繊維の60〜65%を自社用途に回しています。研究・技術(R&T)費用は2024年に5,710万ドル(売上比約3.0%)を投じ、人材や開発プロジェクトへの投資を通じて材料性能と工程の最適化、顧客ごとの資格取得・トレーサビリティを強化することで、大手航空機メーカー向けの安定供給と品質面での優位性を維持しています。
新市場開拓と事業拡大では、既存の航空宇宙分野でのシェア拡大に加え、選別した買収や投資、非中核資産の売却・再編を活用する方針です。具体的にはデカータ(アラバマ)での新炭素繊維ライン建設を再開しており、同ラインは2028年に航空宇宙用途の認定を取得する見込みで、カサブランカのエンジニアド製品工場は規模を倍増して需要に対応しています。民間・政府向けの大型プログラム(F‑35、CH‑53K等)や新世代機でのコンポジット比率上昇を取り込みつつ、工業分野では付加価値の高い用途に注力して2024年に減少した工業売上(前年比‑20.9%)の回復を図る計画です。
同社は技術革新を経営の中心に据えており、先端構造材料の開発と工程革新で競争力を高めることを目指しています。樹脂や表面処理を含む材料設計、量産ラインの資格取得プロセス、製品寿命を見据えた性能データの蓄積といった具体的施策にR&T費用を投じています。またサプライチェーンと情報セキュリティの強化も重視しており、経営陣で構成するサイバー対応チームを運営、主要サプライヤーに対するセキュリティ要件の契約条項化や事業継続計画、サイバー保険の整備などを通じて技術リスクの低減と製品・生産の信頼性向上に取り組んでいます。