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Fusion Fuel Green PLCHTOO
事業内容
Fusion Fuel Green PLCは、かつて自社で開発したグリーン水素の生産事業を中止した後、再編を進める企業です。同社は今後、顧客ごとに設計したグリーン水素プロジェクトの企画・設計・機器販売・建設管理・運転保守までを一貫して支援するエンジニアリングとアドバイザリーサービスを展開する計画を打ち出しています。また、2024年にQINDの過半数を取得し、Al Shola Gasを通じてLPGの供給・販売事業も手がけています。
同社の顧客対象はプラント所有者や開発事業者に加え、商業ビル、集合住宅、商業施設、外食産業や重工業など多岐にわたります。収益はプロジェクトごとの設計・監理や機器販売、工事一括請負や保守契約と、QIND経由のLPG販売・供給による物販収入が中心となる見込みですが、計画中の水素部門はまだ収益を上げておらず、グループの資金は子会社からの配当や収入に依存しています。
事業は大きく「水素関連のエンジニアリング・アドバイザリー」セグメントと「ガス流通・供給」セグメントに分かれます。前者は実現可能性調査から設計、機器調達、建設、法規対応、運転保守までの幅広いサービスを案件単位で提供する方針で、当面は専門家をプロジェクトごとに配置して低固定費で運営する戦略です。後者はLPGシステムのコンサルティング、設計、設置、保守に加え、バルクやボンベでの輸送・供給を行う実需型のビジネスラインとなっています。
経営方針
同社は成長戦略として、従来の自社製品販売からサービス主体への転換を掲げ、グリーン水素プロジェクトの「企画→設計→調達→建設→運用保守」までの一貫した提供を成長の柱にしています。具体的にはフィージビリティ調査や設計(FEL段階)、機器調達や建設監理、運転・保守までを受注ベースで請け負い、案件ごとに収益化を図る方針です。財務面では報告時点で現金残高が約€0.2百万、総負債が約€17.4百万、借入金が約€3.1百万と厳しいため、同社は2025年末までの運転資金確保を最優先課題とし、追加の資金調達(株式や債務の発行)を想定しています。
同社は重点投資分野としてプロジェクト開発能力、エンジニアリング人材、商業・法務の専門性に資金と人材を集中させています。差別化戦略は、過去の技術知見を活かした「顧客ごとの目的別設計」と現地規制への対応力に置き、初期は専門家を案件単位で外注することで固定費を低く抑える運営モデルを採用します。具体的な施策としては、専門的な設計・技術評価を外部のスペシャリストでまかなった上で、採算が見込める案件規模に達した段階で一部機能を内製化していく方針です。
同社は事業拡大の一環として、2024年11月26日にQuality Industrial Corp.(QIND)の多数株式を取得し、約69.36%の支配権を確保しました(対価として3,818,969株の普通株式と4,171,327株のシリーズA優先株を発行。優先株は承認後に41,713,270株へ転換される見込み)。これにより、子会社を通じて液化石油ガス(LPG)の供給・保守事業(Al Shola Gas等)を中核に中東など国際市場へ商業・産業向けのサービス展開を目指しています。ただし、優先株の転換や統合承認に関する条件が残っており、統合コストや追加資金調達、株主承認の必要性といった実行リスクがある点も明示しています。
同社は技術革新に関して、かつての太陽光・電解技術で培った研究開発の知見を、製造ではなく設計や最適化、規制対応のノウハウへ転用する方針です。重要な事実として、従来の水素生産事業は2024年11月11日付で実質的に停止・清算手続きに入り製造資産は処分される見込みであるため、今後は顧客向けの設備設計最適化、供給網と機器選定の評価、法令・安全面の支援を中心に価値提供を行い、同時に知的財産の保護や品質管理でリスク低減を図ることを目指しています。