Helmerich & Payne, Inc.HP

時価総額
$25.9億
PER
石油・ガス向け掘削サービスの最大手。北米でAC駆動リグ最大フリート、米陸上市場シェア26.1%・スーパー・スペック34.6%(2024/9/30)。自動化技術と24時間RSMSを展開。2024年7月のKCA Deutag買収発表。米国・アルゼンチン・豪州・UAE・コロンビア・サウジ展開。

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企業概況
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業績概況
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ライバル企業
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同業種の日本企業
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事業内容

Helmerich & Payne, Inc.は、石油・天然ガスの掘削に特化した掘削リグの所有・運用と、それを支える技術やサービスを主に提供している企業です。同社は高性能な陸上・海上リグを稼働させ、遠隔監視センターによる24時間サポートや自動化技術を活用して掘削の安全性と効率を高めています。

同社の主要顧客は大手統合石油会社や独立系石油会社、国営企業などで、収益は日当制の契約、一定期間の固定契約(FlexPool など)、および性能に応じて報酬が変動する成果型契約が中心です。売上の大半は北米向けで、直近年度は北米事業が約90%に近い割合を占め、最大顧客は連結売上の約11%を占めました。

同社は事業を北米ソリューション、国際ソリューション、メキシコ湾沖の三つのセグメントで展開し、それぞれに応じたリグ運用とサービスを行っています。自社工場でのリグ組立・改修・オーバーホールや部品供給の垂直統合に加え、統一されたデジタル艦隊と自動化ソリューションを導入して掘削品質の向上とコスト削減を図り、自律掘削に向けた技術開発も進めています。

経営方針

同社は事業規模と地域的多様化を図る成長を掲げており、その中心施策がKCA Deutagの買収による国際展開の強化です。買収資金の一部は株式売却で約1.973億ドルを調達して充当する計画で、2024年7月には総額約20億ドルのブリッジローン枠を設定したものの、10月に残余のコミットメントがなくなり施設は終了しています。契約上の受注残(バックログ)は約15億ドルで、うち約53.3%が2025年度中に納入される見込みであることから、同社は短期的には既存の契約を軸に安定した収益確保を目指しています。加えて、大口顧客や資本支出環境を踏まえ、同社は稼働率よりも経済性のマージン確保を優先する慎重な資本配分を継続する方針です。

同社は北米における高性能リグ(スーパースペック)群と垂直統合された供給網への投資を重点化しており、これが差別化の中核になっています。具体的には米国陸上ドリリング市場で約26.1%のシェア、スーパースペック領域で約34.6%を保持し、マーケットしている228基のリグのうち151基が稼働中(2024年9月30日時点)で、2024年度の北米セグメント収益は約24億ドル、同社連結の約88.7%を占めました。自社で運営する地域倉庫と統一部品・資材の供給によりコスト競争力を確保するとともに、24時間体制のリグ監視センター(RSMS)や遠隔運転センター(ROC)で非稼働時間や作業変動を減らす運用改善を進め、性能連動型契約の採用拡大で収益性を高める戦略をとっています。

同社は買収を通じて中東・欧州・アフリカ市場へ事業を拡大する計画で、買収が完了すれば中東での稼働リグ数は従来の2〜3基から約9〜11基へ増加し、サウジアラビアでの操業は2025会計年度第1四半期に開始されています。ただし、同社自身も買収に伴う統合コストや追加的な負債負担を公表しており、既存の債務契約には資本化比率(funded leverage)を55%以下に保つなどの制約や、優先債務が純資産の17.5%を超えないといった維持条項が存在します。買収の未完了や統合の失敗は短期的に経営リソースの分散や株価下落を招くリスクがあるため、同社は財務面と統合計画の両面で慎重に進めることを目指しています。

同社は技術革新を競争力の源泉と位置づけ、自動化とデジタル化に重点投資しています。24時間稼働のRSMSやROCに加え、テキサスのGalena Park施設ではリグの組立・オーバーホールを、タルサ近郊の施設ではモジュール部品の整備を行うなど垂直統合で品質と効率を高めています。統一されたデジタル化されたリグ群を基盤に、ドリリング自動化ソリューションを段階的に商業テスト中であり、同社は人の判断に依存しないデータ駆動の運用へ移行することで掘削精度の向上やコスト低減を実現し、最終的には自律掘削に至る道を目指しています。