Anywhere Real Estate Inc.HOUS

時価総額
$15.1億
PER
住宅不動産仲介の大手。マーケティングとCRMを統合したテクノロジープラットフォームを展開。2022年にタイトル保険を2.1億ドルで売却し持分取得。2024年に自己株買い97百万ドルを実施。米国で約580拠点、約52,900人の独立営業員で展開。

事業内容

Anywhere Real Estate Inc.は、住宅の売買仲介とそれを支えるブランド運営を中核に、フランチャイズ事業や自社運営のブローカー業務、タイトル/エスクローなどの関連サービスを手掛ける総合不動産サービス企業です。同社は複数の著名ブランドを通じて不動産仲介サービスを展開するとともに、エージェント向けのマーケティングやデジタルツールを整備して、消費者の取引体験を簡便にすることに注力しています。

同社の主要な顧客は、フランチャイズ加盟店や自社ブローカーに所属する独立営業エージェント、住宅の買主・売主、法人顧客(リロケーション等)です。収益は主にフランチャイズ料やロイヤルティ、会社所有のブローカー業から得る仲介手数料(売買成立時のコミッション)、およびタイトルやエスクロー、リード生成や戦略的提携からの手数料で成り立っています。

事業は大きくフランチャイズ事業、Owned Brokerage(会社運営のブローカー網)、Title Group(登記・決済関連)などのセグメントに分かれています。フランチャイズ側ではブランド支援や教育、広告配信・リスティング管理を行い、Owned Brokerageは多くの都市圏で直営オフィスと多数の独立エージェントを抱えて仲介収入を得ています。加えて、テクノロジー基盤や消費者向けサービス、外部サービス提供者との提携を通じて、エージェントと顧客の利便性向上を図っています。

経営方針

同社は長期的な成長と収益性の向上を目指しており、2025年に打ち出した「Reimagine25」を成長戦略の中核に据えています。Reimagine25ではジェネレーティブAIなどの新技術を取り入れて顧客体験を速く安く提供することを目標にしており、その実行にはシステム投資や業務再編に伴うリストラ費用が見込まれます。直近では2024年に約1.25億ドルのコスト削減を実現しており、同時に取締役会が承認した3億ドルの自社株買い枠(これまでに9700万ドル、約880万株を買戻し)を持ちながらも、総負債が$2,540 million(約25.4億ドル)あり、借入制約(レバレッジ比率が4.0未満になるまで買戻し制限)があるため資本配分は慎重に行われています。

同社は仲介ネットワークとブランド力を差別化の基盤とし、仲介業者やフランチャイズ加盟店、独立営業者(エージェント)向けのツールとサービスに重点投資しています。具体的には顧客管理ツール(CRM)やリスティング配信、スマホ対応サイトなどを統合したプラットフォームを整備し、エージェントの生産性向上と手数料獲得の支援を進めています。マーケティング費用は2024年に約1.23億ドルを計上しており、ブランドごとのマーケティング基金を通じて加盟店支援を行う一方、エージェント向けの中央事務処理やバックオフィスの集約化でコスト効率も高めています。さらに、モーゲージ分野の49.9%出資ジョイントベンチャーや、持分22%のタイトル保険ジョイントベンチャーなど、住宅取引に関連するサービスを外部パートナーと連携して統合することで、ワンストップに近い顧客体験を提供しようとしています。

市場開拓と事業拡大については、同社は自社保有の仲介網(2024年末時点で約580拠点、約52,900名の独立営業者)を基盤に、地域ごとの生産性向上や選択的な買収・統合で規模と効率を追求しています。2024年はフランチャイズグループの取引ボリュームが前年から5%増、所有仲介グループも4%増と堅調だった一方で、成約件数はフランチャイズで3%減、所有仲介で4%減と件数構造は厳しく、平均販売価格がそれぞれ8%・7%上昇することでカバーする形でした。既存住宅販売が歴史的低水準にある業界環境の中で、同社はリード獲得プログラムや戦略的アライアンスを通じて取引機会を拡大し、地域ごとの強みを活かして市場シェア維持・拡大を図っています(Fannie Maeは2025年の既存住宅販売を約418万件へ3%増と予測)。

技術革新への取り組みは同社戦略の要であり、Reimagine25の下でAIや自動化を用いた業務プロセスの最適化、顧客向けデジタルチャネルの強化、エージェント向けのデータ分析や予測機能の導入を進めています。具体的には、プロプライエタリなツールと第三者製品を一元的に提供するプラットフォーム整備、リスティングの外部配信強化、モバイルアプリによる消費者接点の最適化などに注力しており、これらに伴う投資や人員再配置は今後数年で継続して行われる見込みです。同社はまたサイバーセキュリティやガバナンス面の強化にも取り組んでおり、新技術導入に伴う運用リスクの管理を明確にしています。