Hillenbrand, Inc.HI

時価総額
$22.5億
PER
工業用プロセス機器の最大手。押出、混練、搬送、射出成形など高度な設備とアフターマーケットを展開。2022年10月にLinxisを約5.908億ドルで買収。2022年12月にPeerlessを約5920万ドルで買収。2023年9月にFPMを買収。世界100カ国以上で展開。

事業内容

Hillenbrand, Inc.は高度に設計された産業用処理設備や成形設備を世界中のメーカー向けに設計・製造し、導入から保守まで一貫して提供している企業です。同社はミッション・クリティカルな装置を得意とし、装置本体の販売に加えて据付やアフターサービスにも注力しています。

同社の主要顧客は耐久性プラスチック、食品、リサイクルなどの製造業で、大手企業との長期取引が多く安定した需要基盤を持っています。収益は新規設備の売上が柱である一方、既存設備向けの部品や修理・保守といったアフターマーケット収入が安定したキャッシュフロー源となっており、国際展開と買収による成長も収益構造に寄与しています。

事業は大きくAdvanced Process SolutionsとMolding Technology Solutionsの二つのセグメントで構成しており、前者は混練や押出、原料搬送、計量・自動投入、分離・選別といった加工周辺の装置を中心に食品向け設備も含めたソリューションを提供しています。後者は射出成形機や金型部品、成形の制御システムやメンテナンス用品など成形加工に特化した製品とアフターマーケットサービスを展開し、両セグメントとも導入後のサービスが収益を支える重要な柱になっています。

経営方針

Hillenbrandは、健全な財務基盤の維持と成長の両立を軸に資本配分を進めています。具体的には、純有利子負債を調整後EBITDA比で1.7倍〜2.7倍のレンジに維持することを目標とし、まず流動性確保と負債削減を優先しています。同社は株主還元も重視しており、2021年に上限300百万ドルの自社株買い枠を承認しており、これまでに約175百万ドル分(4,143,000株)を買い戻し、残り約125百万ドルの枠が残っています。配当面では2024年度に四半期0.2225ドルへ増配し、2025年度は四半期ごとに概ね15.8百万ドルの支払いを見込んでいます。

成長投資の重点は、既存顧客向けのアフターマーケットや工程機器の高度化、そして選択的な買収による技術・地理拡大です。同社はAdvanced Process SolutionsとMolding Technology Solutionsの二事業を核に、設置済み機器の保守・部品需要を活用して安定した収益源を拡大する方針です。直近ではLinxis(買収額約590.8百万ドル)やFPMといった戦略的買収により食品加工や複合材料向けの製品群を強化しており、これら買収の統合・シナジー創出に投資を継続しています。ただしMolding Technology側ではホットランナー機器の需要低下に伴う減収や、2024年度における総額265百万ドルののれん・商標の減損など短期的な構造調整コストも発生しており、同社は採算改善・コスト削減を急いでいます。

新市場や事業拡大では、海外展開を積極化しています。2024年度は売上の約59%が米国外で発生しており、欧州・アジア・南米を含むグローバルな販売・サービス拠点を活用して、成長著しい市場や食料・リサイクルなどの分野でシェアを伸ばす方針です。資本面では必要に応じて借入で買収資金を調達しており、例えば2024年には満期2029年の社債500百万ドル(利率6.25%)を発行しました。事業拡大はあくまで「流動性維持→事業投資→株主還元」という資本配分フレームの下で進めることを同社は明確にしています。

技術革新については、製品の差別化と顧客の総所有コスト低減を目的に研究開発と現場ノウハウの投入を続けています。HOM(Hillenbrand Operating Model)という継続的改善の仕組みを通じて生産性向上や品質安定を図り、混練・押出し、計量・配合などの工程技術で顧客課題を解く製品開発に注力しています。加えて環境負荷低減や省エネを訴求するソリューションを強化しており、既存設備のライフサイクル延伸や予防保全を含むサービスで差別化を図ることで、長期的な顧客ロイヤルティとマージンの確保を目指しています。