Hess Midstream LPHESM

時価総額
$38.2億
PER
原油・天然ガスのミッドストリーム事業の大手。ガス集約・処理、原油・NGLの貯蔵・輸送、プロパン地下貯蔵を展開。2025年2月にGIPが1,100万株を公募売却、2024年12月31日時点で支配持分47.7%保有。米国・バッケン中心に展開。

事業内容

Hess Midstream LPは、原油や天然ガス、天然ガス由来の液体燃料(NGL)などの中流事業を手がける企業です。同社は油・ガスの集荷やパイプラインでの輸送、ガスの圧縮・処理、液体製品の分離・貯蔵、ターミナルや輸出向けの積出しといったサービスを通じて資源の流れを支えています。

主要な顧客は親会社であるHessで、同社の収益は主にHessとの手数料型契約に基づいています。これらの契約には最低取扱量の取り決めや物価連動の条項が含まれており、扱った量に応じて安定的に手数料収入を得る構造になっています。

事業の細目としては、天然ガスや原油の集油・輸送、ガス処理とNGLの分別・貯蔵、ターミナル運営と輸出サービス、さらに生産現場で出る水の回収・処理やプロパンの貯蔵などがあります。特に米国バッケン地区の生産に直結するインフラを保有・拡張しており、ガス回収やフレア削減に向けた設備投資にも注力しています。

経営方針

同社は、長期の手数料型契約を基盤に「available cash」(分配可能な現金)の安定的な拡大と成長を目指しています。2024年の調整後EBITDAは約11億360万ドル、当期純利益は約6億590万ドルと堅調な収益基盤を示しており、四半期配当は2025年1月に1株あたり0.7012ドルと宣言されています。一方で、パートナーシップ契約により「分配可能な現金は全額分配する」方針が定められているため、成長投資はリボルビング融資や社債・株式発行など外部資金に依存しており、実際に2024年5月に6.50%で6億ドルの社債を発行、2025年2月にはスポンサーによる公募売出し(1,100万株、発行価格39.45ドル、引受手数料差引後の純額約4.95億ドル)が行われるなど、財務の引き締めと資金調達の組合せで成長を支えています。

同社の差別化点は、主要顧客であるHessとの包括的な商業契約にあります。同社はHess側の生産をほぼ一括して扱う契約上の専属取り扱い(dedication)や最低利用量の確約、インフレに応じた料金調整や料金再算定の仕組みを備えることで、景気変動下でも手数料収入の安定化を図っています。事業面ではバッケン地域を軸に、原油や天然ガスの集積・処理・輸送、NGL(液化炭化水素)の分離・貯蔵、生成水の集積処理、ターミナル運営など複数の領域に重点投資を行い、ガスの回収能力を高めフレア(焼却)を削減することで環境配慮と収益性を両立させようとしています。

新市場開拓と事業拡大では、スポンサーからの資産売却や第三者からの買収を通じた「蓄積的な成長」を追求しています。同社はスポンサーや第三者との協業で第三者生産者の取扱量を増やし稼働率を高める方針で、買収資金は借入や債券発行、場合によっては株式調達でまかなう計画です。料金面の保護策としては一部事業の料金が2033年まで年次再算定される仕組みや最低利用量が続くことが開示されており、会社側は短期的には2025〜2027年の想定ボリュームが既存の最低ラインを上回ると見込んでいます。

技術革新とサステナビリティへの取り組みでは、特にガス回収や排出削減技術への投資を重視しています。同社はフレア削減のための追加的なガス回収能力や、貯蔵施設の季節需給に応じた最適運用といった具体的施策を進めており、Hessの環境・安全方針と連携して温室効果ガス削減や操業の安全性向上を図っています。こうした取り組みは規制対応だけでなく、第三者ボリュームの獲得や保険・資本コストの最適化にも資すると見なしており、技術導入と運用改善を通じて長期的な競争優位を築こうとしています。