WARRIOR MET COAL, INC.HCC

時価総額
$38.4億
PER
スチール製造向け高品位製鉄用石炭の米国最大手。高品質なハードコーキングコール(HCC)とBlue Creek成長プロジェクトを展開。2024年2月9日に定期配当を0.08ドルに引き上げ、特別配当0.50ドルを実施。欧州・南米・アジアを中心に展開。

事業内容

Warrior Met Coal, Inc.は米国アラバマ州を拠点に、主に製鋼向けの高品質な石炭(HCC:硬コークス用炭)を地下長壁式の採掘で生産し、世界の製鉄所へ海上輸出しています。採掘に伴う天然ガスの回収・販売も行い、鉱山運営と物流を一体で管理しています。

同社の顧客は主に高炉を使う製鉄所で、アジア、欧州、南米向けの輸出が収益の中心です。販売は通常1〜3年の供給契約で価格は指数連動型が多い一方、市場機会に応じてスポット販売も行い収益を最適化しています(2024年の地域別売上はアジア42%、欧州38%、南米19%、米国1%)。

同社は単一の事業セグメントとしてプレミアムな製鋼用石炭の採掘・販売に集中しており、低硫黄や高強度などの特性を持つ製品が強みです。ブルークリークなどの成長プロジェクトで生産能力を増強する計画があり、鉱山からモービル港までの距離が短く低コストで出荷できる点や、変動費を取り入れた契約構成で景気循環に強い収益構造を目指しています。

経営方針

同社は成長戦略として、既存資産の生産最適化と大型成長プロジェクト「Blue Creek」の実行を両輪に据えています。Blue Creekは単一の長壁式掘削で年産約440万メートルトンのハイボルA級石炭を想定しており、同社の年間生産能力を約60%引き上げる見込みで、第四長壁は遅くとも2026年第2四半期までに稼働させる計画です。これにより採掘可能埋蔵量約1億5140万メートルトン(2024年末時点)を長期的なキャッシュ創出につなげることを目指しています。同時に資本配分では株主還元と成長投資の両立を掲げ、四半期配当は2024年に1株あたり0.08米ドルまで引き上げるとともに、2024年には特別配当0.50米ドルを実施し、同年の配当総額は約4,380万米ドルでした。余剰資金がある場合は最大7,000万米ドルの自社株買い枠を活用する柔軟性も維持しています。

同社は差別化戦略として「高品質な鋼製造向け石炭」を中核に据えています。採掘する硬質コークス用石炭は低硫黄・低灰分でコークス強度(CSR)が高く、製鉄所のベース原料として優先される性質を持つため、港渡し価格や長期契約での実現価格が高くなる傾向にあります。さらに鉱山から米国モービル港まで約300マイルと他社に比べて近距離で輸送コストに優位性があり、労務・ロイヤルティ・物流費の「変動化」を進めることで市況変動に対する収益性の防御力を高めています。販売面では1〜3年程度の索引(インデックス)連動型契約を中心に長期顧客関係を重視しつつ、需給が有利なときはスポット市場での機会取りも行い、価格実現を最適化しています。

同社は新市場開拓と事業拡大にも積極的で、従来の欧州・南米中心の販売に加え、近年はアジア市場、特にインドや東南アジアへの販売拡大を推進しています。地理的な輸送優位を背景に顧客基盤を広げ、販売比率は2024年にアジア42%、欧州38%、南米19%(米国1%)となっています。Blue Creekの第2長壁の追加や生産能力拡大は市場需給が堅調な局面で迅速に実行できる設計としており、天然ガス回収事業では炭層ガスの除去・販売を通じて副次的な収益源を確保する方針です。資本政策は強い価格環境では株主還元を優先し、弱い局面では成長投資に注力するという柔軟性を持たせています。

同社は技術革新と環境管理にも重点投資を行っています。サステナビリティ戦略の一環として外部コンサルと連携し、温室効果ガス削減や水使用低減などの定量目標を設定しており、環境・許認可管理のための新たなソフトウェアを導入して排出量や用水量のモニタリングを強化します。またメタン回収や揮発性物質の処理に有効な再生式熱酸化装置(RTO)などの導入検討を行い、GHG削減と副次的なエネルギー回収を狙います。情報セキュリティ面でも国際基準に基づいた管理体制と投資を継続しており、採掘技術では長壁式採掘と連続採掘機器の組合せで生産性向上と安全性の両立を図る取り組みを進めています。