Fluence Energy, Inc.FLNC

時価総額
$28.3億
PER
電力系リチウムイオン蓄電ソリューションの大手。バッテリー製品、運用保守サービス、SaaS(Mosaic、Nispera)を展開。2022年にNisperaを33.4百万ドルで買収、SiemensやAESが大株主。米国・欧州・豪州を中心に展開。

事業内容

Fluence Energy, Inc.は電力グリッド向けの大規模蓄電池ソリューションを設計・製造し、導入後の運用サービスやクラウド型ソフトウェアも展開しています。同社はリチウムイオン電池を活用したカスタム設計のシステムを中核に、再生可能エネルギーの変動吸収や需給調整、送配電の渋滞緩和などを目的とした製品を提供しています。

同社の主要顧客は電力会社、独立系発電事業者、再エネ開発者や商業・産業ユーザーで、収益の大半は蓄電システムの販売から得ています。加えて、運用・保守契約やデジタルアプリの契約による継続的なサービス収入もあり、一部の大口顧客への直接販売が業績に大きく影響しています。

事業は大きくハード(設計・調達・組立・設置する蓄電システム)、サービス(保守、性能保証、24時間サポートや運用代行)、デジタル(市場入札最適化や資産性能管理を行うクラウド型ソフト)の三本柱で構成しています。これらを組み合わせて顧客の収益最大化と総保有コストの低減を目指し、量産化やサプライチェーン強化によるスケール拡大を進めています。

経営方針

同社はグローバル規模と技術力を活かして売上と市場シェアを拡大することを成長戦略の中心に据えています。直近ではバッテリー型エネルギー貯蔵ソリューションの売上で2,648百万ドル(約26.5億ドル)を認識し、2024会計年度の純利益は約3030万ドルに達しました。資金面ではIPOの収入や運転資金、短期借入、販債の売却(MRPA)や2024年のリボルバーなど複数の枠を組み合わせ、少なくとも開示時点から12か月間は必要資金を賄えると見込んでいます。同社は生産規模の拡大や地域ごとの最適化を通じて、コスト低減と納期短縮を実現することを目指しています。

重点投資分野は量産体制の強化、主要バッテリー・部品サプライヤーとの関係構築、標準化された製品ラインの拡充、そしてサービスとデジタル製品の拡大です。差別化戦略としてはハード(エネルギー貯蔵システム)とソフト(運用最適化や入札最適化)の組合せで顧客の総所有コストを下げる点を掲げており、24時間体制の保守や劣化保証などのサービス、さらに市場での収益最大化を支援するFluence Mosaic(入札最適化ソフト)やFluence Nispera(資産性能管理ソフト)といったデジタル機能を組み合わせる点を強みにしています。人員増に伴う管理費の増加(一般管理費が3800万ドル増加)や設備償却の増加はあるものの、製品性能とサービスで顧客の信頼を高める投資を優先しています。

新市場開拓では送配電の混雑緩和に用いる「ストレージを送電資産として使う」用途(SATA)や、再エネ導入が進む地域でのユーティリティ向け大型案件を重点的に狙っています。業界全体の成長見通しとしては、BloombergNEFの見解で2024〜2035年に中国を除くユーティリティ規模で約2,529GWhの増加が見込まれており、同社はこの需要拡大に合わせて地域ごとの生産拠点整備や販売チャネルのローカライズを進めています。M&Aも成長手段として継続的に評価しており、実際に2022年にNisperaを買収(買収対価約3,344万ドル)してデジタル機能を強化した実績があります。

技術革新への取り組みでは、AI・データ解析を軸にしたソフトウェア開発と、バッテリーパック設計などのハード改良を並行して進めています。Fluence MosaicやNisperaは市場ごとの最適化や発電・蓄電資産の運用価値最大化に寄与しており、米国のインフラ支援策(IRA)に対応する設計など政策面のインセンティブも取り込める製品開発を行っています。同時に急速な成長に伴う内部統制の強化にも着手しており、収益認識プロセスの管理改善を進めているため、投資家は成長投資と統制強化の両面を注視するとよいでしょう。