Edwards Lifesciences CorpEW

時価総額
$493.3億
PER
構造的心疾患向け医療機器の最大手。経カテーテル弁(TAVR)や経僧帽・三尖弁治療システム、RESILIA組織の外科弁を展開。2024年10月のInnovalve買収。米国で2024年に売上の59%を計上、欧州・日本を含む約100カ国で展開。

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企業概況
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業績概況
テーマ
ブランド
3項目)
ライバル企業
4社)
同業種の日本企業
1社)

事業内容

Edwards Lifesciences Corpは、構造的心疾患の治療に使う医療機器を専門とする企業です。同社は心臓弁を置換・修復するための経皮的(カテーテル)治療装置と外科用の組織弁を中心に開発・製造しています。これらは低侵襲治療から従来の外科手術まで、幅広い患者の治療選択肢となっています。

主要顧客は病院や心臓外科医、循環器内科の医師で、手術や手技の現場で製品が使われるため需要が比較的安定しています。同社は米国を中心に直接販売と独立した流通業者を組み合わせて販売しており、2024年は売上の約59%が米国、41%が海外から生じました。単一の顧客に依存することはなく、特定顧客が売上の10%を超えていません。

事業は大きく経皮的大動脈弁置換(TAVR)、経皮的僧帽・三尖弁治療(TMTT)、外科用構造心臓製品の三分野に分かれています。同社は経皮弁のSAPIENシリーズや三尖弁用のEVOQUE、外科向けのINSPIRIS RESILIAなどの製品群を揃え、修復と置換の両面で市場拡大を目指しています。加えて臨床データの蓄積と研究開発に力を入れ、医療現場での長期的な採用と患者アウトカムの改善を追求しています。

経営方針

同社は構造的心疾患(カテーテルで治す弁疾患や外科的弁置換を含む)に経営資源を集中させ、長期的な成長を目指しています。具体的には、経営資源をTAVR(経皮的大動脈弁置換)、TMTT(経皮的大動脈以外の僧帽・三尖弁領域の治療)、および外科用弁治療に再配分しており、その一環として2024年9月に約$4.2億(注:公開資料では$4.2 billion)のCritical Care事業売却を完了しました。2024年の売上構成は米国が約59%、海外が41%で、外科用製品は売上の約18%を占めており、こうした資金とフォーカスで同社は構造心分野でのリーダーシップ強化を目指しています。また、株主還元では取締役会が最大$1.5 billionの自社株買い枠を承認し、2024年は約16.7百万株、約$1.2 billionを買い戻すなど資本配分のバランスも図っています。

同社の重点投資分野は新規治療法の開発とそれを支える臨床エビデンス、ならびに製品差別化です。具体策としては、経皮的置換や修復に関する有望企業の買収・投資を進めており、2024年には複数の企業を合わせて約$1.5 billionで取得(うち閉鎖時に支払った現金は約$1.1 billion)し、買収後に発生する追加の業績連動支払(最大約$670 million)を見込んでいます。さらに、知的財産リスク低減のために主要競合との15年の「訴訟回避(covenant not to sue)」契約を締結し、これに対して一時金$300 millionと売上連動の年次ロイヤリティ支払いを行うなど、技術面だけでなく法務・戦略面でも差別化しています。

新市場の開拓と事業拡大では、特に僧帽弁・三尖弁領域や介入的心不全といった未解決ニーズに注力しています。実例として、2024年10月にInnovalveを買収して経皮的僧帽弁置換技術を取り込み、JC MedicalやEndotronixなどの買収も行っているため、製品レンジと臨床適用を広げる計画です。グローバル展開は約100か国で販売する既存のチャネルを活かしつつ、各国の診療慣行や保険償還に合わせた導入支援(医師向け教育や現場での臨床支援人材の配置)を通じて採用を加速させることを意図しています。また、余剰資金の一部はM&Aや研究投資、かつ株主還元(ASR=加速型株式買戻し等)に充てると明示しており、資金使途は比較的明確です(2024年のASRは$500 million、2025年2月に追加で$250 millionのASR契約)。

技術革新への取り組みは同社の中核であり、製品ごとに臨床データで差をつける戦略をとっています。たとえばRESILIA組織を用いた外科用弁は7年で構造的劣化がほぼ認められないというデータを示し(発表データで自由度99%)、経皮的三尖弁置換のEVOQUEは世界で初の承認事例の一つとなるなど、製品が承認・普及する過程で得られる臨床結果を重視しています。加えて、買収に伴う未完了研究開発(IPR&D)資産を取得・資本化して開発を加速する投資(例:買収時に計上されたIPR&D)や、製造拠点の多拠点化(米国、シンガポール、コスタリカ、アイルランド等)により供給体制を強化することで、技術的優位性と安定供給の双方を追求しています。