Evogene Ltd.EVGN

時価総額
PER
計算生物学プラットフォームによる医薬・農業・産業向け製品開発の最大手。微生物・低分子・遺伝子向けのAIエンジンによる候補選定と最適化を展開。2024年4月に食品系投資部門と合弁を設立し約40%を出資。米国・欧州・イスラエルで子会社を通じた事業展開。

事業内容

Evogene Ltd.は、ビッグデータと人工知能を活用した計算生物学プラットフォーム(CPB)を基盤に、ライフサイエンス分野の製品開発を効率化する会社です。同社はCPB上で微生物向けのMicroBoost AI、低分子向けのChemPass AI、遺伝要素向けのGeneRator AIという三つの技術エンジンを展開し、候補の絞り込みや最適化で開発期間とコストを下げ、成功確率を高めることを目指しています。

同社は自社の技術を子会社や外部パートナーにライセンス供与したり共同開発契約を結んだりして収益を得ています。収益構造はライセンス料や共同研究の研究開発費、前払金やマイルストーン、最終製品のロイヤルティや株式配当などで成り立ち、農業分野での大手との契約(例:Corteva、Bayerなど)や子会社経由の製品販売が主な収入源になっています。

事業は大きく農業、ヒトのヘルスケア、産業用途の三セグメントに分かれ、農業では種子形質、農薬系(AgPlenus)や微生物製剤(Lavie Bio)を、ヒト向けでは腸内フローラを基にした治療候補(Biomica)を、産業用途ではキャスター油用の改良種子(Casterra)などをそれぞれ開発しています。また、食領域では遺伝要素工学を用いた分子農業(Finally Foods)にも出資し、各子会社が市場投入や資金調達を担い、同社は技術ハブとして研究開発支援とライセンス運用を行っています。

経営方針

同社は「計算予測生物学(CPB)プラットフォーム」を核に、ライフサイエンス領域での製品開発を効率化し、ライセンスと共同研究で収益化を進めることで成長を目指しています。直近の業績は2024年の売上高が約850万ドル、営業損失が約2,221万ドル、営業活動による資金流出が約1,970万ドル、累積赤字が約2.74億ドルと資金面の課題が明確です。経営陣は現金、協業・ライセンス収入、助成金や子会社の資金調達を主要な2025年の資金源と見込み、少なくとも12か月の運転資金確保を目指す方針を示しています(追加調達や希薄化の可能性を含めた計画を検討)。

重点投資分野は、微生物ベース、低分子化合物、遺伝子要素の三領域を支える技術エンジンで、具体的にはMicroBoost(微生物)、ChemPass(低分子)、GeneRator(遺伝子)に重点を置いて差別化を図っています。同社は膨大な候補から計算で有望候補に絞り込み、社内外の実験ラボや温室で迅速に生物学的検証を行うことで、時間とコストを削減して成功確率を高める戦略を採っています。実務面では、各事業を専任の子会社(例:Biomica、Lavie Bio、AgPlenus、Casterra、Finally)に委ね、ライセンス料・研究開発費・マイルストーン・ロイヤルティや出資・売却によるリターンを狙うビジネスモデルを活用しています。

新市場開拓と事業拡大は、主にライセンス提供と戦略的共同開発によって進められます。2025年は特にChemPassを用いた製薬分野のAI創薬に注力する計画を掲げ、既存の農業分野ではCortevaやBayerとの協業例、欧州の研究助成事業(Crop4Clima総予算€2.5百万、Evogeneへの前払い約€1.0百万など)への参画を通じて市場導入を図ります。子会社は外部資金を引き入れて成長を加速させる方針で、Biomicaの約$2,000万ラウンドやLavie Bioへの$1,000万規模のSAFE投資など具体的な資本連携実績があります。経営はまた、必要に応じて非本質的支出の削減、人員調整、研究開発プログラムの延期・再優先化やM&Aを含む手段で流動性を改善する施策を明言しています。

技術革新への取り組みとして、同社はCPBプラットフォームの維持・強化に継続的に投資しており、具体的には大規模データベース、相互接続されたデータハブ、独自の解析と予測アルゴリズムを整備するとともに、検証用の実験設備(試験室、温室、圃場)を保有しています。研究開発体制は厚く、2024年時点で約75名(全従業員の約64%)が研究開発に従事し、2024年の研究開発費は約1,664.8万ドルとなっています。短期的にはChemPassの医薬向け最適化を前面に出しつつ、MicroBoostとGeneRatorは子会社の必要に応じて資金提供を受けながら支援する方針で、計算予測から実地検証までを一貫して回すことで技術優位の維持を図っています。