Elastic N.V.ESTC

時価総額
$78億
PER
検索・オブザーバビリティ・セキュリティ向けソフトウェアの大手。独自の検索プラットフォームとクラウドSaaSを核にした製品群を展開。顧客数は2024年4月30日時点で約2.1万社。2023年11月に関連企業を2300万ドルで買収。米国・欧州を中心に世界展開。

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企業概況
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同業種の日本企業
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事業内容

Elastic N.V.は大量のデータを高速に検索・解析し、ログやメトリクスの可視化、サイバーセキュリティ対策を行うソフトウェアプラットフォームを開発しています。同社の主力はElastic StackとElastic Cloudで、企業がデータからインサイトを得せるための検索・分析機能をクラウドとセルフ運用の両方で提供しています。

顧客は大手企業から教育機関、政府機関まで幅広く、2024年4月時点で約2万1000社を擁しています。同社はサブスクリプション収入とクラウドの利用量に応じた課金を主な収益源とし、多くの新規顧客がElastic Cloudで小規模に開始して利用を拡大することで収益が伸びるビジネスモデルです。また、一部のチャネルパートナーが収益に大きく寄与する年度がある点や、契約更新や利用パターンで四半期ごとの季節性が見られます。

事業構成は検索(Search)、可観測性(Observability)、セキュリティ(Security)といった製品ラインに分かれており、パブリッククラウド(主要クラウドのマーケットプレイス経由)やハイブリッド・オンプレミスの環境で利用できます。さらに同社はクラウド事業者、システムインテグレーター、OEMやマネージドサービスプロバイダーと連携し、導入支援のコンサルティングやトレーニング、サポートをサブスクリプションに含めながら、継続的な研究開発投資で製品の拡張と迅速な機能リリースを進めています。

経営方針

同社はクラウド中心の成長を加速し、サブスクリプション収益の拡大を目指しています。Elastic Cloudは2024年度に同社の総収益の約43%を占め(2023年度は40%)、クラウドへの移行を成長ドライバーと位置づけています。顧客基盤は2017年の約2,800社から2024年には約21,000社へ拡大しており、同社はこの規模拡大を活かして売上の裾野を広げることを目標としています。一方で過去には累積欠損が続いたため財務健全性にも配慮しており、2024年度は純利益6,172万ドルを計上したものの、投資効率と収益性の両立を図る経営を進めています。

同社は研究開発とプロダクト投資を重点分野とし、差別化を図ることを目指しています。2024年度の研究開発費は約3.42億ドルに上り、検索(Search)・観測(Observability)・セキュリティ(Security)といったコアソリューションの機能強化に注力しています。差別化要因としては、ソースを公開した“Elastic Stack”を無料利用と有料サブスクリプションで併用するモデルにより開発者コミュニティの裾野を広げる点、パブリック・プライベート・ハイブリッドを問わない柔軟な導入形態、AWS/GCP/Azureなど主要クラウド事業者とのパートナー連携を挙げており、これらを通じて顧客の初期導入から有料化へと導くことを目指しています。

同社は新市場や事業拡大に積極的に取り組んでいます。既に125カ国超で顧客を抱えており、今後は大企業や公共セクターでの導入拡大、クラウドマーケットプレイス経由の販売強化、システムインテグレーターやOEM・MSPを通したチャネル拡大を目指しています。また、技術や運用効率を補完するための買収も行っており、2023年11月にはOpsterを総額2300万ドルで取得しており、こうしたM&Aを通じた機能強化や市場拡大も計画の一部です。なお、Elastic Cloudの比率上昇は第三者ホスティング費用の増加により粗利率に一定の下押し圧力をかける可能性があるため、そのバランスも管理しています。

同社は技術革新、特に製品の継続的な進化とAIへの取り組みを重視しています。開発は短いサイクルでの反復リリースを基本とし、グローバルに分散したエンジニア組織で新機能やバグ修正を高速に展開しています。開発投資の一環としてコミュニティ向けコンテンツやイベント(ElasticON等)で開発者の定着を図り、AI関連機能や運用効率化ツールの実装で製品のポジショニングを強化することを目指しています。これらの技術投資により、導入の敷居を下げつつ長期的な顧客あたり売上の増加を狙っています。