Element Solutions IncESI

時価総額
$55.8億
PER
電子・工業向け特殊化学品の最大手。ウェットケミストリーやViaForm電解めっき、ナノ銅技術を展開。2023年5月のKuprion買収、2023年6月のViaForm流通権再取得、2024年9月のMacDermid売却合意。米国中心に世界展開。

事業内容

Element Solutions Incは、日常製品の性能を高めるための特殊化学品を開発・製造・販売するグローバル企業です。同社はめっきや表面処理、はんだ材料、接着剤など電子機器や半導体の製造工程で使う液体化学品を主力に展開しています。

同社の顧客は大手の電子機器メーカー、半導体ファブ、自動車部品メーカー、印刷・パッケージング企業、オフショアエネルギー事業者など多岐にわたります。製品は消耗品として繰り返し購入される構造で、高い粗利と安定したキャッシュフローを生み出す点が収益の特徴です。

事業は大きく「Electronics」と「Industrial & Specialty」の二つのセグメントに分かれ、前者は回路形成や組立、半導体向けの化学品群、後者は金属・プラスチックの仕上げ剤、印刷用薬剤、エネルギー分野向け流体などを扱っています。同社は研究開発と技術営業を重視し、顧客製造ラインへの規格導入や専用処方で継続的な取引と市場シェア拡大を目指しています。

経営方針

同社は「世界有数のスペシャリティケミカル企業」を目指しており、顧客価値の創出、従業員の成長機会、そして株主価値(株式の内在的価値)の拡大を長期目標としています。事業モデルは高い利益率と低い設備投資を特徴とし、安定したフリーキャッシュフローを重視することで慎重な資本配分を行っています。実際に2024年は約7,820万ドルを配当として株主に還元し、借入条件も見直して2024年10月に10.4億ドルの新タームローンを組成して金利をSOFR+1.75%に引き下げるなど、財務の効率化で成長の余地を確保しています。

重点投資分野はエレクトロニクス(半導体、プリント基板、組立材料)と産業・特殊用途(表面処理や印刷・エネルギー向け化学品)で、同社は研究開発と顧客向け技術サービスに投資することで差別化を図っています。知的財産の蓄積は約2,900件の特許関連権利にのぼり、顧客ごとに最適化した処方やプロセスで「終端から終端まで」のソリューションを提供することが競争優位の源泉です。例えば、ViaForm®の販売権を再取得するために総額約2億ドルを投じ、サプライチェーンの一元管理で主要半導体顧客への提供効率を高めています。

新市場開拓や事業再編はM&Aとポートフォリオ最適化を両輪に進めています。買収はマージンやキャッシュ創出力、消耗材によるリカーリング収益を重視する方針で、ナノ銅技術を補完するKuprion買収では初期対価約1,590万ドルと将来最大2.59億ドルのマイルストーン条項を組み入れました。一方で非中核事業の売却も進めており、フレキソ印刷用プレート事業の売却で約3.25億ドルを見込むなど、資金を成長分野とバランスシート改善に振り向ける計画です。海外売上比率が2024年に約77%と高い点を活かし、既存の販売網で隣接市場への展開を図っています。

技術革新では顧客やOEM、学術機関と連携して環境負荷の少ない代替材料やプロセスを開発し、持続可能性を事業戦略に組み込んでいます。研究開発費は製品化と工業化を見据えた投資に充てられ、Kuprionのような先端技術は「製品としての実用化」を条件に追加支払いを行う構造でリスクを管理しています。加えて、スキルある技術者の採用・育成や現地権限での迅速な意思決定を重視しつつ、ESG報告やサプライチェーンの監視強化といった規制対応にも資源を割く必要がある点を認識しており、これらを通じて中長期の差別化を図ろうとしています。