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ESAB CorpESAB
事業内容
ESAB Corpは、溶接・切断に関わる機器とその消耗品、関連するソフトウェアや現場サービスを製造・販売する企業です。同社は設備本体の販売に加え、現場での設計支援やアプリケーションエンジニアリングを通じて顧客の生産性向上を図り、独自の改善手法(EBX)で品質と効率を高めています。
同社の主要顧客は建設、造船、自動車、エネルギーなど多様な産業分野の企業で、販売チャネルは直販と代理店・流通業者の組み合わせです。設備販売による一時的な収入と、消耗品や保守・アフターサービスによる継続的な収入源を両立させる収益構造を持っています。
事業は「Americas」と「EMEA & APAC」の二つの報告セグメントで管理しており、地理的に幅広く展開しています。製品ラインは溶接・切断の機器、消耗品(電極やワイヤ等)、ソフトウェアや現場支援サービスが中心で、研究開発投資と買収によって新製品開発と市場拡大を進めています。
経営方針
同社はEBXという独自の業務改善システムを中核に、売上・利益・キャッシュフローの継続的な拡大を目指しています。2024年にはEMEA&APACの売上が15億6,410万ドル、同セグメントの調整後EBITDAが2億8,960万ドル、EBITDAマージンが18.5%に達しており、全社ベースでも調整後EBITDAが前年より1,450万ドル増加、マージンが180ベーシスポイント拡大するなど、収益改善を伴う成長を実績で示しています。経営は有機的成長を重視する一方で戦略的買収も成長の重要な手段と位置づけており、資本配分は事業投資、買収、株主還元(配当と株式買い戻し権限)を組み合わせて行っています。
重点投資分野として同社は研究開発、製造力の強化、アプリケーション支援とアフターサービス、流通網の整備に資源を割いています。研究開発費は2024年に3,920万ドルを計上しており、新製品やソフトウェア、既存製品の改良に継続的に投資しています。差別化は単に特許や製品だけでなく、現場での設計支援や応用技術、EBXを通じた生産性向上と品質管理に依拠しており、顧客の仕様に応える技術力と迅速な供給・サービスで競合に対する優位性を築いています。
新市場開拓と事業拡大はM&Aを通じて積極的に進められています。同社は2023年のTherapy Equipmentや2024年のSager、ESAB Bangladesh、SUMIGなどの買収を実行し、さらに2025年には欧州のサブマージドアーク溶接分野のBavaria Schweisstechnikを約6,000万ユーロで取得する合意に達しています。資金面では営業キャッシュフローを基本とし、必要に応じて最大7.5億ドルのリボルビング枠や追加の短期借入を活用する方針で、加えて2024年には最大500万株までの自社株買い権限を取締役会が承認し、配当も四半期毎に支払うなど(2024年は第1四半期0.06ドル、第2〜4四半期0.08ドル)柔軟な資本政策をとっています。
技術革新に関して同社は製品とプロセスの両面で継続投資を行っており、新製品開発、既存製品のコスト低減・耐久性向上、さらにソフトウェアや自動化を含むソリューション提供に注力しています。研究開発投資に加え、買収で得た技術や専門領域(例えばサブマージドアーク溶接)を取り込み、EBXを活用して技術の標準化・速やかな展開を図ることで、市場ニーズに応じた応用提案力と生産性向上を同時に追求しています。同社はこれらの取り組みを通じて顧客の付加価値創出と株主価値の向上を目指しています。