Dynatrace, Inc.DT

時価総額
$138億
PER
AI搭載のフルスタック観測プラットフォームの最大手。エンドツーエンドの可観測性、ランタイムアプリケーションセキュリティ、次世代ログ解析を展開。2023年8月にRookoutを3,340万ドルで買収。2025年3月期売上の58%を米国で計上し、北米・EMEA・APACで展開。

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企業概況
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事業内容

Dynatrace, Inc.は、企業のアプリケーションやインフラ、クラウド環境を一元的に監視・解析する一体型プラットフォームを提供しています。広範な可観測性と実行時のアプリケーションセキュリティに加え、人工知能を使った自動解析で問題検出や原因特定を支援しています。

同社の顧客は主に売上規模の大きいグローバル企業で、銀行・保険・小売・輸送・ソフトウェアなど多様な業種にまたがります。収益はサブスクリプション型のソフトウェアが中心で、導入支援や教育、上位サポートといったプロフェッショナルサービスやチャネル経由の販売も重要な収入源になっています。

事業は大きくプラットフォーム製品群とサービスに分かれ、モニタリングとログ・トレース・メトリクスの統合解析、実行時セキュリティ、人工知能を活用した運用自動化が主要ラインです。加えて顧客向けの導入支援やトレーニング(Dynatrace University)、クラウド事業者や大手システムインテグレーターとのパートナー連携により導入拡大と機能強化を進めています。

経営方針

同社は持続的な収益成長と効率改善の両立を目指しています。直近の通期売上高は約17億ドル(1,698.7百万ドル)で、年度別成長率は2023年が25%、2024年が23%、2025年が19%と高い伸びを示しています。短期的には顧客基盤の拡大と顧客単価の向上で売上を伸ばす一方、グローバルなパートナー網を活用して販売効率を高め、コスト最適化や収益性の改善にも取り組んでいます。資本政策では最大5億ドルの自社株買い枠を設定しており、2025年3月末時点で約3.27億ドルが残っていることも、株主還元と資本効率の意識を示しています。

同社は製品とサービスへの重点投資を通じて差別化を図っています。研究開発への継続投資でエンドツーエンドのプラットフォーム機能を拡張し、次世代のログ解析やセキュリティデータを「ログ・トレース・メトリクス・セキュリティ情報を統合する単一プラットフォーム」として提供することで、従来型の高コストで分断されたログ管理製品との差を打ち出しています。導入のしやすさも強みとしており、柔軟で予測可能なサブスクリプション型の料金モデル(DPS)を採用する顧客が増えており、2025年度は顧客の4割超、年間経常収益の6割超がこのモデルを利用しています。

新市場開拓と事業拡大では、既存顧客内での利用拡大と組織内での横展開を重視しています。クラウドネイティブや開発チーム、さらには別事業部門への導入を促進し、グローバルの大手企業(売上高10億ドル超の上位1万5千社を想定)を主要ターゲットとする戦略です。販売面ではグローバルシステムインテグレーターやクラウド事業者との連携、主要クラウドのマーケットプレイス経由での調達を強める計画で、また技術補完のための小規模買収も継続的に検討しており、実際に過去にはRookoutを約3,340万ドルで取得しています。販売は四半期末に集中しやすく、案件によっては数カ月から1年以上に及ぶため、営業投資とパイプライン管理を並行して強化しています。

技術革新への取り組みは経営戦略の中心です。同社はアジャイル開発と自動テストの徹底(開発工程で100%のテスト自動化を目標)で頻繁なリリースを実現し、GrailやAutomationEngine、AppEngine、Davisといった基盤技術の高度化に投資しています。特に生成系や自律的に判断・行動する「エージェント化したAI」への進化を掲げ、運用上の自動化や因果関係に基づく意思決定を実現することで競合との差別化を図る方針です。加えて、主要開発拠点の拡張(オーストリアのLinzキャンパス増床など)を通じて人材と研究基盤の強化にも注力しています。