- 米国企業
- DHT Holdings, Inc.
DHT Holdings, Inc.DHT
事業内容
DHT Holdings, Inc.は、大型原油タンカー(VLCC)を所有・運航する海運の持株会社で、原油の海上輸送を主力事業としています。同社は自社船隊をチャーターに出して運賃収入を得るほか、グループ内の管理会社を通じて船舶の技術管理や運航サポートも行っています。
同社の主要な顧客は石油会社やトレーディング会社、その他のチャーター業者で、収益はスポットチャーターやタイムチャーターといった貸船契約に基づく運賃が中心です。加えて、技術管理に対する管理料や、船舶を保有する子会社からの配当・資金移転が親会社の収入源となっており、子会社の業績や配当余力が同社の配当支払能力に直結します。
事業の構成は実務上は一つのセグメントとして管理されており、船隊は報告時点で24隻前後のVLCCで構成されています。各船はスポット契約、時間契約、利益分配を伴う契約などで雇用され、技術管理会社は乗組員手配・整備・ドライドッキング・審査対応など日常の運航管理を担当しています。外部保険や船舶ローンの制約、検査・ベッティング(顧客承認)手続きが運航や収益に影響します。
経営方針
同社は株主還元と安定した運航収益の両立を成長戦略の柱としています。2024年末時点で保有するVLCC(超大型原油タンカー)は24隻、総積載量は約747.9万dwtで、さらに新造船4隻を2026年に受領予定としており、艦隊の更新と拡張を進めています。資本政策では、取締役会承認の下で最大1億米ドルの自己株式買付枠を設定し、2024年12月に1,481,383株を1株あたり平均8.89ドルで買い戻し、買戻枠は約8,680万ドル分が残っています。また、2025年2月には1株当たり0.17ドル、合計約2,730万ドルの配当を実施しており、安定的な配当と資本還元を目指しています。
同社は重点的に船隊の質向上と運航効率への投資を行い、差別化を図っています。技術管理は自社子会社(Goodwood)による管理体制を強化しており、2022年に保有比率を53%に引き上げるなど内製化を進めています。整備・乗組員配置・ドライドッキング・ベッティング(顧客検査)対応を徹底することで稼働率低下を抑え、タイムチャーター契約とスポット市場の組み合わせで収益の変動を管理しています。加えて、主要造船所(Hyundai Samho、Hanwha Oceanなど)での新造船導入や、船級協会の基準順守を通じて安全性と信頼性を打ち出しています。
新市場開拓と事業拡大では、選択的な資産売買と長期契約の獲得を重視しています。2025年1月に「DHT Scandinavia」を売却し、同四半期に約1,980万ドルの売却益を計上した一方で、「DHT China」を日額4万ドルの1年契約、「DHT Tiger」を日額5万2,500ドルの1年契約とするなど、短期的な市場機会を取り込む動きを見せています。将来的には燃費性能の低い船舶を段階的に売却し、新造船や改修による燃費改善投資を行うことで、規制対応と採算性の両立を図る方針です。
技術革新については、燃費改善とリスク管理の両面で具体策を進めています。同社は新造船の導入による省エネ性能向上を図るとともに、既存船の定期的なメンテナンスと改修で効率を高める施策を実施しています。サイバーリスク対策としては外部の専門コンサルタントを起用し、経営陣や取締役会との報告ラインを整備してインシデント対応力を強化しています。また、保険(ハル・アンド・マシナリーや賠償保険、必要に応じた稼働損失保険)や船級基準の順守を通じて運航停止リスクの軽減にも取り組んでいます。