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DENBURY INCDEN
事業内容
Denbury Inc.は米国の独立系エネルギー会社で、主に二酸化炭素(CO2)を使った三次回収(EOR)による油田開発と、そのためのCO2輸送・貯留インフラの整備を事業の中核にしています。同社は広範なCO2パイプライン網とEORの運用ノウハウを保有し、産業由来のCO2を活用して炭素排出を低減した油の生産を進めています。
収益は原油・天然ガスの販売が中心で、CO2の販売や輸送契約からの収入もあります。同社は一部の大口買い手への依存が見られ、2022年はPlains Marketing LPが約27%、Hunt Crude Oil Supply Companyが約11%を占め、両者で合計約38%の売上に寄与しました。
事業は経営上ひとつの営業セグメントとして扱われており、現在はEOR事業が主、炭素回収・利用・貯留(CCUS)は成長分野として取り組んでいます。同社はガルフコーストやロッキーマウンテン地域の油田とパイプライン資産を基盤に、地下でのCO2貯留や第三者向けのCCUSサービス拡充を目指しています。
経営方針
同社は成長の軸を従来の原油・天然ガス生産から、CO2を活用した三次回収(CO2 EOR)と二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)へシフトすることで長期的な価値創出を図っています。公表資料では、既にScope1およびScope2のCO2排出量はネットでマイナスになっており、産業由来のCO2を増やすことで自社の原油生産を「カーボンネガティブ」に近づけ、今後10年以内にScope1~3のネットゼロをめざす目標を掲げています。同社は資本配分についても株主還元と成長投資のバランスを取る方針で、買戻しプログラムは最大2.5億ドルを承認され、2022年6–7月に1億ドル分(1,615,356株、平均取得単価61.92ドル)を取得しました。
重点投資分野は既存のCO2パイプライン資産とEORに関する技術・運用ノウハウの活用です。実例として2021年にワイオミングのBig Sand DrawおよびBeaver Creekフィールドを取得しており、買収対価は現金10.9百万ドルに加え、WTI価格条件に応じた将来支払い(各4百万ドル)が設定されています。これらには46マイルのCO2輸送パイプラインが含まれ、同社はこうしたインフラを差別化要素として、第三者向けの大規模なCO2輸送・貯留サービスを提供することを目指しています。
同社は新市場開拓として、産業界から回収したCO2を受け入れて長期的に貯留する「CCUSプラットフォーム」の商業化を進めています。2022年の年次報告では、専用のCO2貯留や輸送による収益はまだ計上されていないものの、貯留に伴う初期収入を得るための技術評価や資金調達、規制承認の取得を優先課題として挙げており、これらが順調に進めばEOR由来以外の収益源が拡大するとしています。
技術革新面では、同社は長年のEOR運用で蓄積した注入・貯留の現場ノウハウをベースに、産業由来CO2の受け入れや輸送、地層への安全な注入技術の確立に取り組んでいます。具体的には貯留サイトの技術的・経済的評価を実施し、CO2輸送・貯留能力の推定や設備の増設計画を進めるとともに、プロジェクトごとに必要な資金調達と規制対応を並行して行う方針です。なお、同社自身も年次報告でCCUS事業の収益化には技術評価や規制承認、資金調達の成否が重要であり、不確実性が伴うことを明確にしています。