CRISPR Therapeutics AGCRSP

時価総額
$49億
PER
遺伝子編集医薬の大手。CRISPR/Cas9基盤の治療候補(CTX112、CTX131)を展開。2024年2月に約2.8億ドルの資金調達。スイス(ツーク)本社、米国(ボストン、フレーミングハム、サンフランシスコ)中心の展開。

事業内容

CRISPR Therapeutics AGは、遺伝子編集技術を基盤にした医薬品の研究開発を行うバイオ企業です。同社は遺伝性疾患やがんなどを対象に、遺伝子を書き換えることで根本的な治療を目指す候補薬を臨床段階まで進めています。

同社の収益は主に他社との共同開発やライセンス契約からの前払い金やマイルストーン収入、研究資金に依存しています。将来的には自社での製品販売も収益源になる見込みですが、現時点ではパートナーシップ収入が中心です。

事業は大きく研究開発、臨床開発、製造・供給の準備に分かれ、社内施設と外部委託の両方を使って臨床用の細胞製造や試験材料を生産しています。製品ラインは主に体外で細胞を操作する細胞療法タイプと、体内に投与して遺伝子を修正するものの両方を含むプログラム群で構成されています。

経営方針

同社は臨床開発の加速と商業化準備を通じて中長期的な成長を目指しています。財務面では、2024年12月31日時点で現金等約1,903.8百万米ドルを保有しており、少なくとも今後24か月の運転資金を確保していると説明しています。さらに、協業先との契約に関連して達成時に支払われる開発・承認・商業化のマイルストーンは総額で20億米ドル超に上る可能性があり、これが実現すれば将来的な収入源になる見込みです。資金調達チャネルとしては、2021年からの「ATM(随時売出)枠」を維持し、2024年2月には機関投資家向けに約279百万米ドルの直接公募を行うなど、外部資本も活用して事業を推進しています。

同社は遺伝子編集を中核とする治療開発に重点投資を行い、他社との差別化を図っています。具体的には、体内での遺伝子修正を目指す「in vivo」プログラムや、患者の細胞を改変して戻す細胞療法(例:CTX112、CTX131)など複数の領域を並行して進めています。差別化要因としては、創業時にライセンスした基礎的な知的財産、非ウイルス性の投与法やmRNAなど補助技術の活用、そして社内での製造能力を組み合わせる点が挙げられます。これらにより、治療の精度向上と製造の立ち上げ速度を両立することを目指しています。

新市場開拓や事業拡大は、協業と自前のインフラの両輪で進める計画です。同社はVertexなどの戦略的パートナーとの共同開発・ライセンス契約を活用して臨床開発や将来の商業展開を加速させる一方、米国ボストンやフレーミングハムの拠点を中心に自社の製造設備を整備しています。フレーミングハムの細胞療法製造施設は2023年から臨床用製造を開始しており、2036年までのリースを確保して商用供給への拡大も視野に入れています。米国・欧州以外の地域では、販売パートナーやディストリビューターを通じた展開も想定しています。

技術革新への取り組みでは、編集の精度向上や安全性の改善、投与法と製造プロセスの最適化に注力しています。研究開発体制としては、博士号等を有する人材が多数在籍し(68名がPh.D./M.D./Pharm.D.等、研究・技術部門に約342名)、基盤技術の改良と新しい編集手法の実用化を目指す研究投資を継続しています。同社は引き続き社内外の製造能力を強化し、臨床・商用スケールで安定的に供給できる体制を築くことで、技術優位性を商業面にも反映させることを目指しています。