CELESTICA INCCLS

時価総額
$352.5億
PER
データセンター向けHPSを含む電子機器のEMS・ODM事業の大手。サーバー、スイッチ、光モジュール等のハード設計・製造とITAM/ITADのアフターサービスを展開。2024年4月の米NCS買収(買収対価約4,620万米ドル)。アジア約70%、北米約20%の売上構成でグローバル展開(本社トロント)。

事業内容

CELESTICA INCは電子機器の設計・製造からサプライチェーン管理までを一貫して手がけるEMS(受託製造)大手です。同社はハードウェアプラットフォームソリューション(HPS)を含む設計・開発、基板や最終製品の組立・試験、さらにアフターサービスまで幅広いサービスを提供しています。

主要な顧客はクラウド事業者やハイパースケーラー、IT機器のOEM、大手テクノロジー企業のほか航空宇宙やヘルスケア、産業分野のメーカーです。同社の収益は顧客集中が高く、2024年は上位10社で約73%を占め、上位2社がそれぞれ約28%と11%を占めています。

事業は大きくATS(航空宇宙・防衛、ヘルステック、半導体・資本設備など)とCCS(通信・エンタープライズ)の二つのセグメントに分かれています。同社はサーバーやストレージ、ネットワーク機器向けのHPSや基板実装、設計支援、供給管理、修理・リバースロジスティクスやIT資産処理(ITAM/ITAD)などを提供し、高付加価値な設計・エンジニアリングやアフターサービスに注力しています。

経営方針

同社は長期的な成長と株主価値の向上を目指しています。年次報告では明確な売上高の数値目標は示していませんが、主要方針としては既存のエンドマーケットでの浸透率向上、顧客基盤と製品ポートフォリオの多様化、設計や開発、エンジニアリング、アフターマーケット(IT資産管理・処分を含む)といった付加価値の高いサービス拡大に注力すると明言しています。実態としては2024年の売上の約73%が上位10社に依存しており(上位2社はそれぞれ約28%と11%)、地理的には約70%をアジア、約20%を北米で稼いでいる点を踏まえ、リスク管理と成長の両立が狙いです。

同社は投資の重点をハードウェア・プラットフォーム・ソリューション(HPS)や高付加価値のEMS(設計・量産・アフターサービス一貫)に置いて差別化を図っています。具体策としてタイ、マレーシア、米国リチャードソンの工場でAI/機械学習向けやHPSプログラムを支える能力拡張を実施し、チェンナイ、ペナン、サンタクララ、リチャードソンに設計拠点(センター・オブ・エクセレンス)を置いて設計・開発力を強化しています。加えて自動化・デジタル工場ソリューションの導入や「Celestica Operating System」による工程・ベストプラクティスの標準化を進め、品質と生産性での差異化を目指しています。

新市場の開拓と事業拡大は買収や顧客との深い協働で進めています。2024年4月にITインフラと資産管理事業を手掛けるNCS Global Servicesを取得し、買収対価は現金部分で39.6百万ドル、最終的な取得対価は公表ベースで46.2百万ドル、条件達成で最大20百万ドルのアーンアウトが設定されています。買収で認識した顧客関連の無形資産やのれんも計上しており、無形資産の償却増は年間で約3百万ドルの影響見込みです。同社は「オペレート・イン・プレース」など顧客拠点を直接運営する手法やハイパースケーラー向けの白箱サーバー/ストレージなどクラウド・データセンター領域の拡大にも注力していますが、顧客集中や統合コストといったリスクも開示しています。

技術革新への取り組みとしては設計・試作・量産導入の早期対応を重視し、プロトタイピングや新製品導入(NPI)、故障解析ラボ(電子顕微鏡や分光器などを用いる設備)に投資しています。供給網の最適化には高度な計画・解析や基幹系のITツールを活用し、顧客向けにはアフターサービスやリバースロジスティクスを統合的に管理する「コントロールタワー」モデルを提供して総所有コストの低減を図っています。また、自動化やデジタル化の展開で短中期の生産性改善を図りつつ、HPSやAI向け製品群の開発で差別化を進めることを継続的な投資方針としています。