CHS INCCHSCP

時価総額
PER
穀物・油糧種子の調達・加工と農業資材・燃料販売の最大手。エタノール・食用油・DDGS・飼料を展開。50%出資の合弁運営や2024年のAg部門売上304億ドル。米国中心、欧州・中東・アジア・南米で展開。

事業内容

CHS INCは、農業投入資材の販売、穀物や油糧の売買・流通、油脂や飼料、再生可能燃料の加工・製造などを手掛ける総合的な農業協同組合系企業です。同社は米国内を中心に穀物のマーケティングと油糧処理、エタノールなどの燃料生産、そして農業向け小売りを主力事業としています。

主要な顧客は農家や地域の協同組合、貯蔵業者(エレベーター)、飼料や食品メーカー、エネルギー関連企業などで、国内外に販売網を持っています。同社は投入資材の販売、穀物の売買・仲介、加工品(精製油やミール、エタノール等)の販売、物流サービスから収益を得ており、収益は季節や商品価格、輸送コストや政策変化の影響を受けやすい構造です。

事業は大きく「グローバル穀物・加工」「アグリ小売」「ホールセールの肥料・農薬供給」などのセグメントに分かれています。具体的には国内外の輸出ターミナルや河川ターミナル、エレベーター網を運営し、大豆や菜種の圧搾加工で食用・非食用の油や飼料用ミールを生産、また穀物の一部を原料にエタノールとその副産物である飼料(DDGS)を製造して販売しています。さらに一部事業は合弁で運営しており、輸出分野ではCargillとの合弁(TEMCOなど)を通じた活動も行っています。

経営方針

同社は「顧客がまずCHSを選ぶ」ことを目指しています。成長戦略は、農業資材・穀物・加工品・エネルギーを一体で提供する統合モデルを軸に、収益性の改善と資本効率(主にROIC=投下資本利益率)を重視することです。実際に経営陣の短期・長期インセンティブは、短期で企業業績70%・個人業績30%の配分がされており、長期報酬は3年ROIC達成に連動しています。直近のアグセグメント売上は約304億ドル(FY2024)と大規模である一方、同社は事業が資本集約的であるため営業キャッシュと外部資金へのアクセスを両輪に成長を進める方針です。ただし協同組合の構造上、普通株式による資金調達が制限され、優先株の配当も年率8%に上限がある点が資金調達面の制約になっています。

重点投資分野としては、施設・サプライチェーンの維持・更新、アグリ小売網と加工能力の強化、再生可能燃料や肥料分野への投資が挙げられます。具体的には、同社は国内で420のアグリ拠点を運営し、年換算で大豆・菜種を約1.44億ブッシェル処理する油糧加工能力や、261百万ガロンのエタノール生産能力、乾燥蒸留物(DDGS)約65.8万トンの生産規模を有しており、こうした生産・販売の一貫体制が差別化の核です。また、輸出ターミナルや河川・エレベーター網、50%出資のTEMCOなどの合弁事業を通じてグローバル販売網を抱えている点も競争優位です。

新市場開拓や事業拡大では、国際マーケットの開拓と既存製品の付加価値化を推進しています。欧州・中東・環太平洋・南米に拠点を置き、再生可能燃料は自社生産分に加えてマーケティング合意により450百万ガロン超のエタノールと500万トンのDDGSを取り扱う等、市場アクセスを拡大しています。加えて、窓口となる卸売肥料ネットワーク(倉庫端末11拠点やガルベストン港等)や窒素肥料の投資(CF Nitrogenへの出資)を通じて、下流・国際販売を広げる方針で、必要に応じて買収・提携・ジョイントベンチャーを検討して事業ポートフォリオを最適化しています。

技術革新については、敏捷で効率的かつ持続可能なIT基盤とサプライチェーンを構築することを目指しています。具体的には、業績管理やリスク管理の向上に向けたデータ活用、施設の自動化・近代化、サイバーセキュリティの統合的運用(取締役会のリスク委員会や監査委員会の監督下で実施)に投資しています。為替や商品価格変動に対するリスク管理としては外国為替ヘッジを利用しており、為替デリバティブの名目額は2024年8月31日時点で約15億ドルでした。これらの技術・管理手法を通じてマージン改善と安定したキャッシュ創出を図ることが同社の狙いです。