Black Knight, Inc.BKI

時価総額
$1097.3万
PER
住宅ローン・不動産向けソフトウェアとデータ分析の米国最大手。統合ソリューションと高付加価値データ・アナリティクスを展開。2021年にNexSpringとeMBSを買収、2022年にICEと合併合意。米国とインドで展開。

事業内容

Black Knight, Inc.は住宅ローン、消費者ローン、不動産および資本市場向けにソフトウェア、データ、分析サービスを提供する企業です。主力はクラウド型の業務プラットフォームやワークフロー、価格算出やレポーティングといったツール群で、ローンの申請から保守、投資分析までの業務を一貫してサポートしています。

同社の主要顧客は大手・中堅の金融機関、住宅ローンの貸し手やサービサー、仲介業者、投資家、弁護士やトラスト関係者、不動産専門家など多岐にわたります。収益はソフトウェアのライセンス・ホスティング、データ提供、導入やコンサルティング等の継続契約に依存しており、上位5社で2022年に約23%の連結売上高(ソフトウェア分野では約25%)を占めました。

事業は大きく「ソフトウェアソリューション」と「データ・アナリティクス」のセグメントに分かれています。前者はローン起点のオペレーションやコンプライアンス支援、後者は顧客行動モデルやポートフォリオ分析、マーケットインサイトを提供し、同社は自社データを製品に組み込みつつ新機能や買収で製品群を拡充し、既存顧客へのクロスセルで成長を図っています。

経営方針

同社はオーガニックな売上拡大を成長の軸に据えつつ、必要に応じて選択的な買収で事業領域を補強することを目指しています。直近の連結売上高は約15.5億ドル(2022年)で、営業利益率は約17.9%と一定の収益性を確保しており、上位5社で約23%の売上が占められるなど大口顧客との深い関係を成長の土台にしています。中長期ではミッドティアの貸し手やモーゲージ・ブローカー市場など、まだ浸透が進んでいない顧客層への展開で新規契約の獲得を狙っています。

同社は重点的にソフトウェアとデータ・分析分野へ投資して差別化を図ることを目指しています。具体的にはホスト型のソフトウェア基盤により、既存プラットフォームに新規顧客を追加しても増分コストが小さい「スケーラブルな運用モデル」を活用し、規制対応やコンプライアンス支援といった付加価値を低コストで提供する方針です。2021年にはソフトウェア部門だけで約12.5億ドルの収益を計上しており、データ資産を製品に組み込んだ分析機能で顧客の業務改善に直結する価値提案を強化しています。

新市場開拓と事業拡大は、既存顧客へのクロスセルと戦略的買収の二本立てで進めています。既存のエコシステムに別製品を組み込むことで顧客一社当たりの利用範囲を広げることを目指し、過去数年でOptimal BlueやNexSpring、eMBSなどの買収を実施してきました。買収資金は場合によって借入や株式発行で賄う可能性があり、実際に2022年の金利費用は約1.006億ドルに増加するなど財務面の影響も考慮しつつ統合と相乗効果の実現を追求しています。

技術革新への取り組みとして、同社は自社保有の公的・専有データを活用した行動モデルやポートフォリオ分析などの分析機能を製品に埋め込み、顧客の意思決定を支えるインサイト提供を強化することを目指しています。研究開発は同社の中核的活動であり、顧客と協働して業界動向に即した新機能を迅速に投入する体制を維持しています。プラットフォームの近代化やクラウド基盤への対応、規制対応機能の継続的な改善を通じて、技術的な陳腐化を防ぎ顧客の離脱リスクを低減する方針です。