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HeartBeam, Inc.BEAT
事業内容
HeartBeam, Inc.は、慢性心疾患患者の長期モニタリングを目的とした携帯型の心電図(ECG)プラットフォームを開発しています。主力製品は患者近くに常時装着して心電図を記録・リアルタイム送信するデバイスで、将来的には標準的な12誘導心電図に相当する合成12誘導波形や人工知能を活用した解析を組み込む計画です。
同社の主要な顧客はコンシェルジュ診療や循環器専門診療、病院の循環器部門で、当面は既存の保険償還外での直接販売を中心に収益化を図っています。長期的には保険者との連携や臨床的な有効性・費用対効果の実証を通じて保険適用を目指し、技術ライセンスやパートナーシップも収益の重要な柱と想定しています。
事業はハードウエア(携帯型デバイス)、ソフトウエア(合成12誘導心電図やクラウドベースのモニタリング)、臨床開発・エビデンス構築の三本柱で展開しています。量産に向けては外部の受託製造業者と連携して生産体制を整え、臨床試験や学術発表で医療現場の支持を得ながら機能追加やAI解析の導入で価値向上を図る方針です。
経営方針
同社は「どこでも使える高解像度の携帯心電モニタリング」を軸に事業成長を図っています。具体的には外来や自宅での長期モニタリングを可能にするHeartBeam Systemを米国で商業化し、合成された12誘導心電図(12L)ソフトウェアの追加的な承認を取得することで診断用途の適用範囲を広げることを目指しています。財務面では、2024年12月31日時点の現金は約240万ドルと前年の約1,620万ドルから大幅に減少しており、年後に公募等で約1,150万ドルを調達したものの、提出された財務諸表では運転資金が今後12か月を賄うのに不十分であるとの見解(継続企業懸念)を提示しています。経営陣は主要マイルストーンの達成見込みを四半期ごとに再評価しており、最近は規制承認の想定時期を2025年12月31日へ修正したため、業績計上における費用見直し(株式報酬費用の約20万ドル減少等)も行っています。
同社は研究開発と臨床エビデンス構築に重点投資して差別化を図っています。2024年の研究開発費は前年から約430万ドル(63%)増加しており、臨床試験や外部業務委託(CRO)への支払いが主因となっています。臨床試験の総費用は約80万ドルを見込んでおり、CRO契約には約50万ドルのサービス料が含まれます。技術面では、心臓の電気信号を三方向で取得して合成12誘導を再現する独自のプラットフォームを有し、特許での保護を図ることで既存の病院ベース機器との診断同等性を狙う差別化戦略を採っています。
市場開拓ではまず米国内の高付加価値セグメントを狙っています。同社はコンシェルジュ診療や循環器クリニック、病院の「在宅医療」プログラム、臨床試験用途を初期顧客と定め、学術的な臨床研究とコスト効果の示唆を積み上げることで保険者(ペイヤー)との適用拡大・保険償還の交渉に繋げる計画です。製品の量産化に向けては生産用金型・治具を既に調達し、共同開発先であるTriple Ring Technologiesとの協業や外部の委託製造業者(CM)選定を進め、デザイン移管後に商用生産へ移行する工程を想定しています。また、従業員は2024年末で21名と小規模であるため、販売・臨床体制強化のための採用も見込んでいます。
技術革新への取り組みは長期データ収集とアルゴリズム開発に重点を置いています。同社は日常的に得られる縦断的な心電データと合成12誘導データを蓄積し、将来的に人工知能(AI)を用いて心疾患の検出・予測機能を追加することを目指しています。並行して製品の安全性・品質確保のための設計検証やIEC基準準拠の試験を進め、クラウドベースのデータ管理・解析基盤の整備を進行中です(クラウドの可用性は事業継続にとって重要なリスク要因であるため、運用と冗長化の管理が重要になります)。これらの取り組みによって、医療現場での採用拡大と将来的なライセンス/パートナーシップ機会の創出を狙っています。