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BARNES GROUP INCB
事業内容
BARNES GROUP INCは精密部品とエンジニアリングを中心に事業を展開する米国の製造企業です。同社は航空機向けのエンジン部品やアフターマーケットの整備修理に加え、産業向けの精密金型や自動化部品、力・動きの制御製品など多様な製品と技術を提供しています。世界各地に製造・販売拠点を持ち、直接販売や流通チャネルを通じて顧客に供給しています。
同社の主要顧客は航空機メーカー(OEM)、整備・修理業者(MRO)、ティア1サプライヤーに加え、産業機械・自動車・医療・包装など幅広い業界のメーカーです。売上は製品販売が中心で、2023年の総売上高は約14.5億ドル、その内訳は産業部門が約8.4億ドル、航空部門が約6.1億ドルを占めています。上位顧客への依存度は比較的分散しており、複数の大口顧客で全体の割合を構成しています。
事業は大きく航空と産業の二つのセグメントで構成されています。航空セグメントではOEM向け部品とアフターマーケットの修理・オーバーホールを展開し、MB Aerospaceの買収でエンジン部品製造・修理能力を強化しました。産業セグメントではホットランナーや金型、金型用センサー・工程制御、ロボット用グリッパーやエンドオブアームツーリング、そして力・動き制御や精密ばね、パンチング・ファインブランキング部品などの製造を手掛け、設計から量産まで一貫して支援しています。
経営方針
同社は成長と収益性の改善を目指しています。2023年の連結売上高は約1,450.9百万ドルで前年から約15%増加し、オーガニック成長は約5.1%(約64.5百万ドル)でした。成長の中核は航空宇宙分野への注力で、2023年8月にMB Aerospaceを買収(買収対価は約728.4百万ドル)したことで航空宇宙事業の規模と受注残(OEM向けバックログは約1,233.6百万ドル、前年比64.5%増)が大きく拡大しており、同社はこの取り込みで売上拡大と顧客基盤の多様化を図ることを目指しています。同時に、資金面では事業売却による債務削減(Associated SpringとHänggiの売却契約額175百万ドルなど)と、長期の信用枠(総額1,650百万ドル:タームローン650百万ドル、リボルビング1,000百万ドル)で財務の安定化を図っていることも明確です。
同社は差別化のために精密部品とカスタムソリューションへの重点投資を目指しています。Industrialセグメントでは金型用のホットランナーや高精度成形部品、ロボットの把持具や制御センサーといった製品群に強みがあり、AerospaceではOEM向けの量産部品とアフターマーケットの修理・オーバーホール契約を通じた長期関係を武器にしています。具体的には顧客との長期契約や収益分配・部品修理の契約、グローバルな生産拠点の最適化や調達の合理化を進め、製品設計段階から参画することで「品質・納期・技術力」で競合と差別化することを目指しています。人材面でも約6,500名の従業員を抱え、タレント管理システムを通じた育成と配置で競争力の維持を図っています。
同社は新市場の開拓と事業ポートフォリオの最適化を目指しています。MB Aerospaceの統合により防衛分野や国際市場でのプレゼンスを高める一方、非中核事業の売却で得た資金を成長分野に再投資していく方針です。具体的には、MB Aerospaceの買収による四半期分で約114.5百万ドルの増収を確認しており、OEM受注の約50%が次の12か月で売上化される見込みのため短期的な売上基盤の強化を目指しています。ただし、統合やリストラに伴う一時費用(2023年は買収関連費用約23.8百万ドル、再構築・変革関連費用約45.8百万ドル、買収会計の在庫評価調整約19.2百万ドルなど)が発生する点は認識しており、これらを見据えた段階的な拡大を志向しています。
同社は技術革新への投資を継続して事業優位性を高めることを目指しています。買収時の無形資産評価でも「顧客関係」や「開発済み技術」の価値を重視しており、製造プロセス改善や自動化、センサー・制御技術、金型・成形プロセスの高度化に注力しています。加えて、業務の効率化に向けたITや生産管理システムの統合、サプライチェーン強靭化のための長期調達契約締結、そして製品技術の保護に向けた特許・ノウハウ管理も強化しており、2024年の設備投資は約70百万ドルを見込むなど、技術基盤と生産性向上に資本を配分することで中長期の競争力向上を目指しています。