AXON ENTERPRISE, INC.AXON

時価総額
$407.9億
PER
警察向けハードウェアとクラウド型デジタル証拠管理ソフトの米国最大手。ボディカメラ、TASER、ドローン管理プラットフォームを展開。24年1月にFususの残り79.7%を約2.413億ドルで買収、同年10月にDedroneの残り79.8%を約3.911億ドルで買収。米国・欧州を中心に世界展開。

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事業内容

Axon Enterprise, Inc.は主に法執行機関や公共安全向けに、ボディカメラや録画機器、TASERを中心とした制圧用機器と、それらを連携させるクラウド型のデジタル証拠管理ソフトを展開しています。同社はハードウェアとクラウドサービスを組み合わせた「公共安全向けのプラットフォーム」を提供し、現場での映像やデータを収集・安全に保管・分析できる仕組みを構築しています。

主要な顧客は警察や矯正施設、民間のセキュリティ事業者や教育・企業向けの公共安全部門で、売上はハードウェア販売とサブスクリプションやクラウド利用料などの反復的なサービス収入で成り立っています。同社は近年クラウドやソフトウェアの継続収入比率を高める戦略を進めており、大口顧客への依存度は低く分散した顧客基盤を持っています。

事業は大きく「Software and Sensors」セグメントと「TASER」セグメントに分かれ、前者はボディカメラやドローン管理、映像の集約・管理を行うクラウドサービス(Axon Evidenceや関連のリアルタイム映像統合技術)を担い、後者は制圧用機器、本体バッテリーやアクセサリー、延長保証やトレーニングといった付帯サービスを扱っています。同社は買収や技術開発を通じて監視・ドローン・リアルタイム運用などの機能を拡充し、ハードとソフトを一体で提案することで差別化を図っています。

経営方針

同社は「公共安全のオペレーティング・システム」を構築することで中長期の成長を目指しています。直近の実績として、2024会計年度の売上高は約21億ドルで前年から33.4%増加し、当期純利益は3.77億ドルを計上しています。資本政策面では、株式報酬枠として2024年末時点で約320万株が新規付与可能で、2024年には従業員向けのパフォーマンス型プラン(XSP)で4.5百万株のプールを設け約410万XSUを付与しました。さらに、公開市場での随時売出(ATM)で最大約200万株の発行枠を持ち、株式買戻しプログラムは総額5,000万ドル枠のうち約1,630万ドルが未使用と、流動性と株主還元の両面で柔軟性を保持しています。現金・現金同等物は約4.55億ドル、有価証券を含めた手元流動性は約7.88億ドル、借入制約を考慮した純レバレッジ比率はマイナス0.17と堅調な財務基盤を維持しています。

同社の重点投資分野はクラウド型のデジタル証拠管理(Axon Cloud & Services)とハードウェアの自動化・コスト削減で、これらを組み合わせたエコシステムで差別化を図っています。2024年は高付加価値のクラウド収益比率が上昇したことにより、在庫・製造面での改善と合わせて調整後粗利率が63.2%に上昇しました。また、戦略投資・買収を通じて製品群を拡張しており、リアルタイム映像集約のFususについては追加取得に約2.41億ドル、対空空域セキュリティのDedroneについては追加取得に約3.91億ドルを投じ、取得した開発技術や顧客関係など無形資産を計上している点が競争優位の源泉になっています。

新市場開拓と事業拡大では、法執行以外にも連邦機関、矯正施設、民間企業の安全・警備分野へ横展開を進めています。ドローンプラットフォーム(Axon Air、Sky‑Hero)やカウンタードローン(Dedrone)、VRによる現場訓練など新しいソリューションを取り込み、グローバル展開も拡大中です。一方で国際展開に伴う輸出規制・通貨制約・各国の法令対応リスクも認識しており、これらを踏まえて製造施設や資本設備への投資を段階的に実行する計画を持っています。組織面では2025年第1四半期に事業再編を実施し、ハードウェアとソフトウェア/サービスをより明確に分離して透明性を高める方針です。

技術革新への取り組みはクラウドとセンサーの統合、AIや自動化の導入に重きを置いています。同社はクラウド上での映像保管・検索・共有機能を中心に、ボディカメラや車載カメラ、データ解析、リアルタイム運用ソフトウェアを連携させることで他社が単独では実現しにくいワンストップ提供を目指しています。研究開発や買収による技術獲得を継続するとともに、社員報酬の一部を業績連動型株式で付与することで長期的なイノベーションの動機付けを図っています。また、財務開示と内部統制の強化にも取り組んでおり、収益認識に関する管理体制の改善計画を進めている点はガバナンス面での前向きな施策といえます。