ALTISOURCE PORTFOLIO SOLUTIONS S.A.ASPS

時価総額
$5.7億
PER
不動産・住宅ローン向けサービスの統合型プロバイダーの有力企業。Hubzu、Equator、TrelixAIなどのSaaS技術を展開。2024年12月16日の取引支援合意、2025年2月13日に約460万RSU付与、2月18日に株式発行枠拡大承認。米国・欧州・インドで展開。

事業内容

Altisource Portfolio Solutions S.A.は、不動産と住宅ローン分野向けの統合サービス事業者で、投資家や貸し手、サービサー向けに物件管理、評価、決済、ローンの事務処理などの業務と不動産マーケットプレイスを運営しています。同社は業務を支えるソフトウェアや自動化ツールを組み合わせて、ローンの組成から保全・売却までの一連のプロセスを一元化しています。

同社の主要な顧客は住宅ローンのサービサー、ローン起源業者、政府系機関(GSE)、資産運用会社、銀行・信用組合や投資用不動産の売買関係者です。収益は手数料型のサービス収入を重視し、顧客のために発生した費用は実費精算で扱うためマージンはサービス収入に依存します。また、Lenders Oneという住宅ローン協同組合の運営から得る収益が売上に含まれ、その組合分の利益は非支配持分として調整して同社の純損益を算出します。

同社は事業を「Servicer and Real Estate」と「Origination」の二つの報告セグメントに分け、コーポレート部門を別に管理しています。Servicer and Real Estateでは物件保全・検査、タイトルと決済、評価、差押え関連サービス、改修やオンライン競売プラットフォームなどと、REOや差押え管理向けのSaaSや家賃データといった技術製品を提供しています。Originationではタイトル保険の取扱いや決済、ローンのフルフィルメント、ベンダー管理プラットフォームやLOLA、TrelixAI、ADMSといったローン組成や品質管理を支援する技術ソリューションを展開しています。

経営方針

同社は「住宅ローンと不動産のマーケットプレイスおよびそれに付随する技術支援型サービスの主要プロバイダーになる」ことを成長戦略の中核に据えています。具体的には、既存顧客からの紹介とクロスセルでサービス量を拡大し、2024年に立ち上げたリノベーション事業など新しい収益源で営業キャッシュフローの改善を図るとしています。実際に営業活動による純キャッシュ流出は2023年の約2,183万ドルから2024年は約502万ドルへ改善しており、販売管理費や売上原価の削減(SG&Aは2024年に2,761万ドル、売上原価は650万ドルへ減少)を通じて収益性向上を目指しています。一方で、借入金の利息負担は大きく、将来の主要な資金使途として短中期に約8,870万ドル(表中は千ドル表示)程度の弁済・利息・リース支払が見込まれるため、資本構成の安定化も併せて目指しています。

同社は重点投資分野を「サービサー・不動産領域」と「ローン組成(オリジネーション)」の二軸に置いています。前者では物件保全、鑑定、流動化後の資産管理やオンライン競売プラットフォーム(Hubzu)を通じた仲介を、後者ではLenders One協同組合を通じた会員向けの製造・資本市場支援を強化しています。差別化要因としては、全国規模でのサービス提供力とワンストップで提供できる製品群、顧客データと知的財産の活用を挙げており、実際に政府系住宅機関や資産運用会社、大手サービサー(Onity、Rithm等)を顧客に持つことを強みとしています。資本配分面では株主還元枠として最大310万株の自社株買い枠が承認されていますが、新たなファシリティ条項により買戻しは限定的になっています。

新市場開拓や事業拡大については、同社はLenders Oneを通じた会員拡大と会員へのソリューション浸透、マーケットプレイスの拡張、そして2024年に開始したリノベーション分野からの収益拡大を明確な方向性としています。大型契約の獲得には提案から稼働まで1年超を要することが多いため、営業と導入の投資を継続して行う計画です。資本再編の一環として、2025年2月に株主総会で承認された取引により、最大約1.145億株を行使価格1.20ドルで購入できるワラントの発行や、貸し手側への株式交付によって実質的な出資構造の変更(貸し手が約63.5%を保有)を実行しており、これらは短中期の資金調達と財務安定化を目的としています。

技術革新への取り組みでは、同社は業務自動化とデータ解析を成長の基盤と位置づけています。ローン製造や検査、品質管理の自動化を目指すTrelixAIやLOLA、データ分析・文書管理のADMS、評価モデル(NestRange/RentRange)などのSaaS製品を活用して業務効率化を進めており、その結果として2024年はテクノロジー関連費用や通信費が前年比で約42%減の344万ドルにまで低下しています。加えて、同社はNISTやISOに準拠したサイバーセキュリティ体制を整備し、最高情報セキュリティ責任者(CISO)と専任の運用チームによる24時間監視や年次のリスク評価、ベンダー管理を通じてデータの保護とサービス継続性の強化を目指しています。