ASPEN AEROGELS INCASPN

時価総額
$2.6億
PER
エネルギー産業向け断熱材とEV用熱バリアの有力企業。薄型で柔軟なエアロゲル断熱材「PyroThin」などを展開。2022年にKoch系が$100.0Mの転換社債と約$49.9Mの株式で出資、2023年12月に約$74.4Mを公募で調達。米国・欧州・アジアで展開。

事業内容

ASPEN AEROGELS INCは、空気を多く含む高性能な断熱素材「エアロゲル」を薄く成形した布状製品を主に製造・販売する会社です。同社は軽く薄い断熱ブランケットや、電気自動車のバッテリー向けに設計した薄型の熱バリアなど、熱を遮る用途に特化した製品群を展開しています。

同社の販売は流通業者、施工業者、製造元(OEM)や最終使用者向けの直接取引を組み合わせたチャネルで行っています。収益は限られた大口顧客に偏っており、特に自動車関連の大手顧客の受注が業績に大きく影響するため、販売サイクルは一般に1〜3年と長期になります。

事業は「Thermal Barrier」と「Energy Industrial」の二つの報告セグメントに分かれており、前者ではPyroThinという薄型の熱バリアを中心に、バッテリーの熱暴走を抑える用途に注力しています。後者ではプラントや配管向けの高性能断熱ブランケットを提供し、従来品より薄く高効率でライフサイクルコストの低減を訴求しています。

経営方針

同社は長期的に売上と粗利の拡大、キャッシュフロー改善を目指しています。具体的には製造能力を継続的に引き上げる成長計画を掲げており、電池向けのシリコンリッチ材料市場に意味のあるシェアで参入するためには「年に数百トン」規模の生産まで短期間でスケールアップする必要があるとしています。財務面では資金調達で公募・私募・借入れを併用しており、2024年には公募で4,887,500株(公募価格20ドル)を実施、またクレジット契約で125百万ドルのタームローンを組み、回転枠から43百万ドルを引き出すなどの手当てを行っています。

同社は投資の重点を二つの柱に置いています。一つはEVバッテリー向けの薄型熱バリア「PyroThin」などの熱管理製品で、既に複数の自動車OEMと複数年の生産契約を結んでいる点を差別化要素としています。もう一つはエネルギー工業向けの高性能エアロゲル断熱材で、同社は従来材に比べて2〜5倍の熱性能や薄型化による設置コスト低減を訴求しており、プレミアム価格ながらライフサイクルコストでの優位性を強調しています。市場構造としては2024年に上位10社が売上の84%を占め、特定顧客(2024年はGMが約64%)への依存が高いことを認識した上で、OEMやディストリビュータとの深い関係構築を通じて導入拡大を図っています。

新市場開拓と事業拡大に関しては、既存のエネルギー産業向けチャネルに加え、EV分野でのバッテリー熱保護やセル性能向上(カーボンエアロゲルやシリコン-炭素複合体)への展開を進めています。製造拠点面では米国内での生産ライン増強や「Statesboro」等の新拠点立ち上げ計画、メキシコでのサーマルバリア組立施設や中国の外部製造との連携を進め、東プロビデンスからメキシコへの組立移管などを想定して供給網を強化しています。ただし新規設備稼働までの販売確度は段階的で、商談から広範な採用に至るまで通常1〜3年を要するという販売サイクルを前提に計画を立てています。

技術革新への取り組みでは、同社はエアロゲル技術プラットフォームへの継続投資を明確にしています。PyroThinの商用化に加えて、カーボン系エアロゲルやシリコンリッチ負極材の研究開発を進め、バッテリーの充電時間短縮やエネルギー密度向上を狙っています。一方でシリカ由来のエアロゲルと比べてカーボン系やシリコン-炭素複合体は製造・サプライチェーン上の課題が大きく、短期間で数百トン規模に拡大するためには工程改善、設備投資、人材確保といった具体的施策を急ぐ必要があると認識しており、研究開発力と製造体制の両面での強化を継続しています。