Ardmore Shipping CorpASC

時価総額
PER
中型プロダクト・化学品タンカーの最大手。エコデザインの燃費効率高いタンカー22隻保有の船隊を展開。2021年6月に水素生成装置開発企業へ10%出資。世界規模で運航、バミューダ本社とシンガポール・アイルランド・米国に拠点展開。

事業内容

Ardmore Shipping Corpは、石油製品や化学品の海上輸送を世界中で手がける船会社で、主に燃費効率の高い中型の製品・化学タンカーを運航しています。主力サービスは短期のスポット航海と一部のタイムチャーターによる貨物輸送で、近代的なエコ設計船を中心に運航しています。

同社の主要顧客は石油メジャーや国営石油会社、トレーダー、化学メーカーなどで、収益の大部分は短期のスポット契約から得ています。船舶の商務管理は自社のチャータリングチームが担い、顧客の信用力や輸送ニーズに応じて船の配置や契約形態を決めています。

同社は報告上は単一の事業セグメントで船舶運航を扱い、2025年3月時点で所有船22隻と借上船4隻の計26隻で運航しています。技術管理は同社と第三者が出資する合弁会社などで行い、燃費や排出削減に重点を置いた船隊構成や非化石燃料貨物の取り扱い拡大を事業の重要な特徴としています。

経営方針

同社は質の高い近代的な中型プロダクト/ケミカルタンカーの分野でリーダーシップをとることを目指しています。具体的には、2025年3月7日時点で自社保有船22隻、借船4隻の計26隻を稼働させ、平均船齢は約10.5年と比較的若い艦隊構成を維持しています。成長は慎重な資本配分を基本とし、必要な設備投資や船舶買収は現金、与信枠、あるいは状況に応じた債務・株式発行で賄う方針です。同時に株主還元策も重視しており、上限5,000万ドルの自社株買い枠を設け(2024年に約1,556,203株を約1,790万ドルで買い戻し、残余認可額は約3,210万ドル)、四半期ベースで前期調整後利益の1/3を目安に配当を行う方針(2024年末配当は1株当たり0.08ドル、総額約320万ドル)を採っています。

重点投資分野は燃費性能と運航効率の向上で、同社は燃費に優れた「エコ設計」艦を中心にそろえることで差別化を図っています。具体的には電子制御エンジンや低抵抗船体、効率的なスクリューなどの設計採用に加え、エンジン診断や運航パフォーマンスのモニタリングで燃料消費を削減しています。運航面では自社のチャーターチームと、当社50%出資の技術管理合弁会社(AASML)が22隻の技術管理を担い、オンショアの社員は約56名、船員は約880名規模で運航・整備を支え低コスト体制を維持しています。これにより、複雑な積み替えや複数荷役・複数港の取扱いなど、化学製品と精製品(CPP)の重なりを活かした高付加価値な航海を提供しています。

同社は新市場・新事業開拓においても脱炭素分野を重点に据えています。エネルギー・トランジション計画(ETP)では非化石燃料貨物への移行を見据え、2024年の取扱い貨物の約15.8%が非化石系であったことを公表しています。技術面への出資としては、燃料電池向けの水素生成技術を開発するElement 1社に対して当初約930万ドルを投じて10%出資し、海事用途の合弁(e1 Marine)も立ち上げるなど事業連携を進めました(e1 Marineの持分は2024年5月に165万ドルで売却)。同社は買収や合弁を通じた成長を志向しますが、船舶の納期遅延や資金調達の必要性といったリスクも明示しており、慎重に案件を選別する方針です。

技術革新への取り組みは運航技術と将来燃料の両面で進められています。既存艦の燃費改善に加え、将来的な排ガス処理強化のために「スクラバー(排気洗浄装置)をカーボンキャプチャ対応で準備」する計画を掲げ、必要に応じて追加装備を実施する方針を示しています。また、船舶の運航安全・管理に関してはサイバーセキュリティ対策として監視・分析システムを外部専門業者と連携して導入しており、運航データや安全性の監督を強化しています。経営陣のインセンティブも業績連動型にしており、業績向上と株主価値の同時実現を図る体制を整えています。